研究課題/領域番号 |
24561009
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
金子 栄廣 山梨大学, 医学工学総合研究部, 教授 (60177524)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 生物系廃棄物 |
研究概要 |
本研究は、堆肥化技術を応用した新しい固形燃料製造技術の開発を目指すものである。 具体的には堆肥化反応(好気的微生物反応)で普遍的にみられる「有機物の生物分解に伴う発熱・昇温」と「好気的条件を保持するための通気」を効果的に制御することにより効率よく廃棄物を乾燥処理して燃料価値のある製品を得る方法を検討するもので、1.生物系廃棄物の発熱量評価、2.対象材料からの水分蒸発の定式化、3.反応材料の熱的特性および生物反応特性の把握、ならびに4.反応のシミュレーションとその妥当性の検証 を柱として研究を推進することとしている。 このうち、1.については数種類の生物系廃棄物について発熱量を測定した。いずれも乾燥させれば燃料として十分利用可能な発熱量を保持していることが把握でき、本研究で目指す技術は幅広い生物系廃棄物に適用できる可能性があることを明らかにできた。2.については短時間では堆肥化反応(生物分解反応)をしない材料(木くず)を用いた乾燥実験を行い、反応に伴う発熱がない場合の乾燥過程について定式化と検証を行った。その結果、材料乾燥速度には材料含水率、通気の湿度ならびに反応温度が大きく関わることが明らかとなった。また、これら影響因子の影響を数理モデルとして示すことができた。3.については生物反応特性のうち材料分解量、酸素消費量および発熱量との関係を実験的に把握できた。これにより、2.の定式化を、堆肥化反応をする(反応中に発熱・昇温のある)材料を用いた場合にも適用できる形に発展させる途が開けた。4.については1.~3.の検討が進んだ段階で検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画で平成24年度は3つのサブテーマを掲げて研究を遂行することとしていた。 1つめは、各種生物系廃棄物の発熱量評価であった。当研究室で模擬廃棄物として使用しているドッグフードと木くずの混合物、その堆肥化物、下水汚泥、生ごみ、豚ふんおよびその堆肥化物について発熱量を調べた結果、いずれも乾燥状態では燃料として使用可能な発熱量を有することがわかった。 2つめは、生物系廃棄物からの水分蒸発の定式化であった。まずは生物分解せず自己発熱のない材料を想定し、材料含水率、通気中相対湿度および温度が乾燥速度に影響すると仮定した数理モデルを構築した。これに基づいて通気反応塔(カラム型反応器)内での乾燥の進行をシミュレーションするプログラムを作成した。そのシミュレーション計算結果を、短期間では生物分解せず自己発熱のない木くずを材料として用いたカラム乾燥実験の結果と比較し、シミュレーションが比較的精度よく行えることを確認した。なお、この部分の成果については廃棄物資源循環学会の研究発表会において口頭発表するとともに、雑誌の記事として基本的な考え方を紹介した。 3つめのサブテーマは反応材料の熱的特性および生物反応特性の把握であった。このうち熱的特性については検討することができなかった。しかし、生物反応特性については実験室規模の堆肥化実験を行い、堆肥化反応過程での材料分解量、酸素消費量ならびに外部放出熱量の関係を把握することができた。未検討の熱的特性については、平成25年度にはあらためて評価方法を含めて検討する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度においては、まず前年度に検討ができなかった材料の熱的特性の把握について実験等を開始する。これは、生物反応がある(発熱・昇温のある)材料の場合にも適用できるように反応シミュレーションを拡張・改良する上で必須の情報となるからである。最低限把握しなければならない項目としては材料の比熱がある。堆肥化反応過程において生じる含水率変化や有機物分解にともなう比熱の変化にも着目して評価を行う。また、実験においては反応装置自体がもつ熱損失特性も把握しておかなければならない。 熱的特性が把握できたら、これまでに構築してきた乾燥シミュレーションプログラムに発熱と昇温の項目を追加してこれを改良し、生物反応がある材料を用いた場合のシミュレーションプログラムの構築に着手する。 また、平成24年度では反応材料の生物反応特性について基本的な情報を得ることができたので、今後はさらにこれを推し進め、反応材料の分解の進行度と酸素消費速度や発熱速度との関係を調べるための検討も行い、これも上で述べたシミュレーションプログラムの改良に反映できるようにする計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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