本研究の目的は,生物系廃棄物を乾燥すれば燃料として利用可能な発熱量を保有することを明らかにし,また当該廃棄物を好気的微生物反応に伴う発熱を利用して乾燥させる場合の運転管理条件と乾燥・反応の進行との関係をシミュレーションするためのプログラムを提示することであった。なお,本研究においてはこの反応を行う反応器として通気反応塔に絞って検討することとした。 初めに熱量計を用いていくつかの生物系廃棄物試料の発熱量を測定し,それぞれが燃料として利用可能な程度に発熱量を保有していることを示した。 また,シミュレーションプログラムの構築に関しては,まず微生物反応がない単純乾燥の場合について,シミュレーションプログラムの作成と実験を行い,両者を比較しながら精度よいシミュレーションプログラムを構築した。 次いで,このプログラムに微生物反応に関わる関数を組み込むため,材料の比熱ならびに有機物分解にともなう酸素消費量と発熱量との関係を実験的に明らかにした。 以上の結果を総合して,好気的微生物反応を伴う乾燥と反応の過程をシミュレーションするプログラムを作成した。また,モデル生物系廃棄物を使用した乾燥実験を行って乾燥と反応の時間進行を調べた。実験結果とシミュレーション結果を比較したところ,材料の乾燥状況や温度変化など,実験値に近いシミュレーション結果を得ることができた。 この研究の成果を活用すれば,試行錯誤的に数多くの実験を行わなくても,通気反応塔やこれと類似の乾燥形式を持つ反応器で生物系廃棄物を乾燥させる場合の適正な運転管理条件や適正な反応器の設計ができるようになる。
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