福島の原発事故によって日本におけるCO2削減問題は大きく後退したと言える.しかし,長期的視野に立てば,CO2削減は避けて通ることは出来ない重要な問題である.CO2の電解もその基礎技術の一つであり,炭素と酸素に分離して再利用出来れば,環境問題と資源問題を軽減する一つの方策になり得るものと思われる.現在,鉄鋼業ではCO2を削減するため,様々な分野で省エネルギー・省資源に取り組んでいる.その中で,CCS(CO2 capture and storage)として,CO2を大量に分離貯蔵する技術開発が進んでいる.このとき,分離したCO2を原料として,自然エネルギー(風量,太陽光)のような変動の大きい電源を使用し,炭素および酸素,また状況に応じてCOガスなどを製造出来れば,その電源変動を吸収し,既存電源設備への負荷を軽減出来るため今後重要になるものと考えられる. 本研究ではジルコニア固体電解質を用いてCO2電解を行った.アノード側の反応は, O2- → 1/2 O2(g) + 2e- (1)カソード側の反応は,CO2(g) +2e- =CO(g) + O2- (2) と考えられる. 電解質のアノード側はO2ガス発生側でPt電極とした.カソード側は,CO2ガス分解側であり,Pt電極およびFe電極を用いてそれぞれCO2分解性能を比較した.H24年度は,実験装置の作成,基礎データの収集に努めた. カソード側にPt電極を用いた場合の結果は良好なもので,本実験装置でCO2の高温電解が比較的容易に進行する事を確認出来た.現在,Fe電極において,実験中である.Fe電極では鉄の酸化反応が進行しすぎて,発熱し固体電解質が割れるトラブルが相次いだ.H25年度は電解温度を比較的低い温度に設定して,最適条件を決定する予定である.
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