本研究は「鉄触媒を利用した固体電解質によるCO2直接分解」をテーマとして,まず,Pt-YSZ-Ptセルを用いて基本的な実験条件を決定した.この時,2V~4Vの過電圧をかけると,セルの性能が飛躍的に向上することを明らかにした.これはPt電極の白金が移動しYSZ-白金界面の密着性がナノオーダーで向上するためであることを明らかにした.次にカソード側において白金を鉄に変え,Fe-YSZ-Ptセルを用いたCO2電解を行いその特性を明らかにした. Fe-YSZ-Ptセルでは、カソード電極にFeを用いているため、カソードで予想される反応機構が異なり、Feの酸化・還元反応を利用した、一種のRedox反応電極といえる。 予想されるFe電極の構造、および反応機構は、COとCO2の分圧比によって、Feは,ウスタイト (FetO) やマグネタイト (Fe3O4) に酸化される可能性がある。 Fe電極を用いた実験の結果,CO2分解反応が活発に進行し、電極中のFe構造はFe-FetO-Fe3O4の多層構造をとることがわかった。このような多層構造においては、FetOおよびFe3O4中では、Feの移動、Fe中ではOの移動が起こることで、CO2分解反応が連続的に進行するものと考えられる。反応が十分に進む場合は、8Vの高電圧を印加しても電子伝導が起こらないため、Pt電極を使用した場合よりも、大量のCO2を一度に分解することが可能であることがわかった。ただし、同じ大きさの電圧を印加した時の分解量はPt電極よりも少ないため、十分な分解量を得るには高い電圧の印加が必要になり、エネルギー効率は悪くなる。また、電解を開始する前に酸化が進行した場合、Fe電極の密着性が悪くなり、反応の進行が妨げられる。このような性能の低下は、電解開始前にFeが酸化するのを防ぐことで、抑制できることがわかった。
|