研究課題/領域番号 |
24561012
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小野 英樹 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30283716)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 廃棄物再資源化 / 反応・分離工学 |
研究概要 |
老廃鉄スクラップを選別することなく全量リサイクルするためには、鉄中Cuの除去技術を確立することが必要である。本研究では、Na2S系フラックスを用いた溶鉄の脱Cuに着目した。Na2Sが本来有するCu吸収能を活かすためには、Na2S単独のフラックスを用い、脱Cuに十分な硫黄ポテンシャルを確保した条件を実現する必要がある。この観点から、まず第一に、Feの共存しない条件下でNa2S系フラックスのもつ本来の脱Cu能 (Cu吸収能)を把握するため、1473Kにおいて、Na2S系フラックスと溶融Ag間のCu分配比を系の硫黄ポテンシャルを変化させて測定した。実験は、フラックス(Na2S)試料とメタル(Ag-Cu)試料を黒鉛るつぼに入れ、黒鉛るつぼにはフラックスの蒸発を防ぐために黒鉛製のふたをし、Arガスを流しながら1473Kの電気抵抗炉内で平衡させた。平衡後、試料をAr気流中で急冷し、フラックスとAg相を分離し、フラックスおよびAg中の各成分分析を行った。実験は、初期Ag中硫黄濃度を変化させて行い、硫黄ポテンシャルの変化によるCu分配比の変化を調べた。 本実験から得られたCu分配比の硫黄ポテンシャル依存性から、Na2S系フラックスが高いCu吸収能を有することが明らかとなった。さらに、既知の炭素飽和溶鉄とAg間におけるCu分配比と本実験で得られたNa2Sフラックス-Ag間のCu分配比(5~42)から、Ag相を媒介相として用いた場合、炭素飽和溶鉄とNa2Sフラックス間におけるCu分配比として、40~330の高いCu分配比が期待できることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
炭素飽和溶鉄とNa2Sフラックス間において高いCu分配比(40~330)が期待できることが明らかとなり、当初研究実施計画通りに、研究は進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の結果より期待される炭素飽和溶鉄とNa2Sフラックス間におけるCu分配比に基づく脱Cu限界値まで、実際にCu濃度を低減可能かどうかを調べるため、Fe, Ag相のうちAg相(Ag中Cu)のみをNa2Sフラックスと接触させて硫化するAg相を介した溶鉄中Cuの硫化除去実験を行う。 本研究はFe, Ag相のうちAg相 (Ag中Cu) のみを硫化することで、鉄を硫化させることなく、Na2S系フラックス単独の高塩基性条件で溶鉄の硫化脱Cuを行うことが要点である。Feよりも比重が大きいAgのみに脱Cuフラックスを接触させるため、試料の配置を工夫して実験を行う。すなわち、大きな黒鉛るつぼ中でAgを溶融させ、その中に小さい黒鉛るつぼで外気相と隔離された空間をつくり、その中で炭素飽和鉄を溶融させる。Na2S フラックスをAg相の上部に添加することで、炭素飽和溶鉄とNa2S フラックスが直接接触しない条件を実現する。実験は、1473Kにおいて保持時間ならびに初期炭素飽和鉄中Cu濃度を変化させて行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費を含め、当初予定通りの計画を進めていく。
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