研究課題/領域番号 |
24561013
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
乗富 秀富 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 助教 (20237895)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 吸着 / 固定化 / 低温創製バイオマス炭 / 植物バイオマス廃棄物 / リゾチーム / タンパク質 / 残存活性 / 熱安定性 |
研究概要 |
植物バイオマス廃棄物として北海道規格外廃棄小豆ならびに廃棄竹材から窒素雰囲気下、450℃以下の低温で熱分解・炭化処理を行うことにより得られた低温創製バイオマス炭への卵白リゾチームの吸着挙動に関して検討を行った結果、以下の知見が得られた。1、低温創製バイオマス炭へのリゾチームの吸着はFreundlich型吸着等温式で相関できた。さらに、小豆炭は竹炭に比べてより優れた吸着性能を示した。2、低温創製バイオマス炭へのリゾチームの吸着量は溶液pHに強く依存し、中性付近で最大吸着量が得られた。3、低温創製バイオマス炭へのリゾチームの吸着量は溶液含有塩濃度すなわちイオン強度の影響を受け、塩濃度の上昇とともに吸着量は減少した。4、低温創製バイオマス炭へのリゾチームの吸着量は吸着温度に強く依存し、25℃付近で最大吸着量が得られた。5、低温創製バイオマス炭をζ電位やラマンスペクトル、固体CP/MAS 13C-NMR、X線光電子分光により分析を行った結果、低温創製バイオマス炭表面で酸性官能基の存在が確認できた。したがって、吸着特性はリゾチームと低温創製バイオマス炭表面間の静電相互作用に起因すると考えられる。6、低温創製バイオマス炭吸着リゾチームの最適活性は生のリゾチームに比べてアルカリ側にシフトした。このことは低温創製バイオマス炭表面の静電力に起因することを示している。7、低温創製バイオマス炭吸着リゾチームは生のリゾチームに比べて低温保存安定性が優れていることを見出した。8、低温創製バイオマス炭吸着リゾチームの熱安定性は吸着量にほとんど依存しないことを明らかにした。9、90℃における低温創製バイオマス炭吸着リゾチームの熱失活曲線から得られた半減期は生のリゾチームに比べて7倍大きい値を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では低温創製バイオマス炭へのタンパク質の吸着挙動に関して検討するため、吸着量に対する吸着操作時の物理的ならびに化学的諸条件の効果を検討する予定であったが、さらに低温創製バイオマス炭のキャラクタリゼーションを各種分析により検討することにより、低温創製バイオマス炭へのリゾチーム吸着の主要因子を限定することができた。また、実用触媒性能として重要な低温創製バイオマス炭吸着リゾチームの触媒活性に対する水溶液pHや反応温度の効果を明らかにした。さらに、低温創製バイオマス炭吸着リゾチームは生のリゾチームに比べて優れた低温貯蔵安定性を発揮することを見出した。低温創製バイオマス炭吸着タンパク質の熱安定化特性に対するタンパク質吸着量の影響に関する検討は当初平成25年度に予定していたが、種々のリゾチーム吸着量を有する低温創製バイオマス炭吸着リゾチームを調製して所定加熱処理後の残存活性を測定した結果、残存活性はリゾチーム吸着量に対して特別な影響が見られないことが判明した。低温創製バイオマス炭吸着タンパク質の熱失活曲線の解明は平成26年度に研究を予定していたが、所定加熱処理温度における低温創製バイオマス炭吸着リゾチームの残存活性を測定し、残存活性と加熱処理時間の関係から熱失活曲線を求めた。得られた熱失活曲線を解析することにより半減期を求め、生のリゾチームと比べて定量的に熱安定化能の優位性を評価することができた。
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今後の研究の推進方策 |
低温創製バイオマス炭吸着タンパク質の熱安定化特性は、低温創製バイオマス炭へのタンパク質吸着時における諸条件に起因して影響されるものと考えられる。平成24年度の研究成果に基づいて、平成25年度は以下のように研究を推進する予定である。1、低温創製バイオマス炭吸着タンパク質調製時の水溶液pHと低温創製バイオマス炭吸着タンパク質の残存活性の関連性を解明する。所定の水溶液pHで調製された低温創製バイオマス炭吸着リゾチームを分散させた緩衝液に加熱処理を施した後、リゾチームの残存活性を測定し、吸着時の水溶液pHと残存活性の関係を明らかにする。2、低温創製バイオマス炭吸着タンパク質調製時の塩濃度と低温創製バイオマス炭吸着タンパク質の残存活性の関連性を解明する。所定の塩濃度で調製された低温創製バイオマス炭吸着リゾチームを分散させた緩衝液に加熱処理を施した後、リゾチームの残存活性を測定し、吸着時の塩濃度と残存活性の関係を明らかにする。3、低温創製バイオマス炭吸着タンパク質調製時の吸着温度と低温創製バイオマス炭吸着タンパク質の残存活性の関連性を解明する。所定の吸着温度で調製された低温創製バイオマス炭吸着リゾチームを分散させた緩衝液に加熱処理を施した後、リゾチームの残存活性を測定し、吸着時の吸着温度と残存活性の関係を明らかにする。 平成26年度は平成24年度及び平成25年度の研究で得られた成果からモデルタンパク質である卵白リゾチームに対する低温創製バイオマス炭の熱安定化因子を抽出し、低温創製バイオマス炭のタンパク質熱安定化作用のメカニズムを解明する。さらにタンパク質の種類を広げて低温創製バイオマス炭のタンパク質熱安定化作用の一般的特性を明らかにする。一般的特性評価の指標は、熱変性曲線と熱失活曲線である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は研究を推進するにあたり、スクリーニングやデータの再現性を当初の計画よりスムーズに達成することができた。したがって消耗品を計画より抑えることができたので、当該助成金(繰越額)が生じた。 平成25年度は上述のように種々の吸着条件に対する低温創製バイオマス炭のタンパク質熱安定化特性を詳細に検討するためのスクーリーニング実験を行う予定である。したがって、実験を行うための生化学実験用試薬や生化学実験器具などの購入に物品費を使用する。また吸着関連やバイオ関連の国内学会や国際会議に参加して研究成果を報告するとともに関連研究の情報を収集し、さらに誌上発表を行うために旅費やその他の経費を使用する。
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