研究課題/領域番号 |
24561013
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
乗富 秀富 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 助教 (20237895)
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キーワード | 吸着 / 固定化 / 低温創製バイオマス炭 / リゾチーム / α-キモトリプシン / タンパク質 / 残存活性 / 熱安定性 |
研究概要 |
植物バイオマス廃棄物として廃棄竹材から窒素雰囲気下、450℃以下の低温で熱分解・炭化処理を行うことにより得られた低温創製バイオマス炭に吸着されたタンパク質の熱安定化特性における低温創製バイオマス炭タンパク質吸着条件の効果に関して検討を行った結果、以下の知見が得られた。1、90℃加熱処理後の低温創製バイオマス炭吸着リゾチームの残存活性は、低温創製バイオマス炭吸着リゾチーム調製時における水溶液pHに強く依存することが明らかとなった。2、90℃加熱処理後の低温創製バイオマス炭吸着リゾチームの残存活性は、低温創製バイオマス炭吸着リゾチーム調製時における塩濃度により影響され、塩濃度の増加にともない減少傾向にあった。3、90℃加熱処理後の低温創製バイオマス炭吸着リゾチームの残存活性は低温創製バイオマス炭吸着リゾチーム調製時における25℃から50℃の温度範囲においてほとんど変わらなかった。 さらに低温創製バイオマス炭へのα-キモトリプシンの吸着挙動に関して検討した結果、以下の知見が得られた。1、低温創製バイオマス炭へのα-キモトリプシンの吸着はFreundlich型吸着等温式で相関できた。さらに、バガス炭は小豆炭に比べてより優れた吸着性能を示した。2、低温創製バイオマス炭へのα-キモトリプシンの吸着量は水溶液pHに強く依存し、弱酸性付近で最大吸着量が得られた。3、低温創製バイオマス炭へのα-キモトリプシンの吸着量は溶液含有塩濃度すなわちイオン強度の影響を受け、塩濃度上昇とともに吸着量は減少した。4、低温創製バイオマス炭へのα-キモトリプシンの吸着量は吸着温度に強く依存し、25℃付近で最大吸着量が得られた。5、低温創製バイオマス炭の細孔特性に関して検討した結果、細孔径ピークが2.6 nm未満であることが明らかとなった。一方、α-キモトリプシンの大きさは細孔径ピークよりはるかに大きい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画で本年度予定していた低温創製バイオマス炭吸着リゾチームの熱安定性に対する吸着条件の効果に関する研究成果を得ることができた。さらに来年度行う予定であったバイオマス炭へのα-キモトリプシンの吸着特性の評価を今年度推進することができた。また前年度は低温創製バイオマス炭の表面化学特性に関して検討したが、本年度は細孔径分布を測定した。前年度用いたリゾチームと本年度用いたα-キモトリプシンの低温創製バイオマス炭への吸着の実験結果と低温創製バイオマス炭の表面化学特性ならびに細孔特性を合わせて考察した結果、タンパク質は主に静電相互作用と水素結合により低温創製バイオマス炭に吸着していることを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は平成24年度及び平成25年度の研究で得られた成果からモデルタンパク質である卵白リゾチームに対する低温創製バイオマス炭の熱安定化因子を抽出し、低温創製バイオマス炭のタンパク質熱安定化作用のメカニズムを解明する。さらにタンパク質の種類を広げて低温創製バイオマス炭のタンパク質熱安定化作用の一般的特性を明らかにする。一般的特性評価の指標は、熱安定化曲線と熱失活曲線である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度研究を推進するにあたり、スクリーニングやデータの再現性を当初の計画よりスムーズに達成することができた。したがって消耗品費を計画より抑えることができたので、当該助成金(繰越額)が生じた。 平成26年度は上述のように種々の低温創製バイオマス炭吸着タンパク質の熱安定化特性を詳細に検討するためのスクリーニング実験を行う予定である。したがって、実験を行うための生化学実験用試薬や生化学実験器具などの購入に物品費を使用する。さらに吸着関連やバイオ関連の国内学会や国際会議に参加して研究成果を報告するとともに関連研究の情報を収集し、さらに誌上発表を行うために旅費やその他の経費を使用する。
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