研究課題/領域番号 |
24561017
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 函館工業高等専門学校 |
研究代表者 |
小林 淳哉 函館工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (30205463)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ホタテガイ貝殻 / 機能性材料 / ハイドロキシアパタイト / 抗酸化性 |
研究概要 |
ホタテガイ貝殻を高圧容器を用いて120-150℃で水熱抽出処理した。水熱抽出液を凍結乾燥させた粉末は、電気泳動によれば分子量4000-6000程度のタンパク質であると推定できた。 この研究では、貝殻中の有機物の高付加価値製品への有効活用を進めることが目的で、その一つは抗酸化剤としての適用である。抽出物を純水に溶解し、「ロダン鉄法」による抗酸化性評価を行った。抗酸化性を有することが知られ、健康補助剤に実用されているローズマリーの抗酸化率を100とすると、貝殻からの150℃での水熱抽出物は約70%に相当する抗酸化性を示すことを見出した。25年度はより詳細な抽出条件を検討することでより高い抗酸化性が期待できる。 抽出物をハイドロキシアパタイト(HAP)の結晶化条件下に共存させることで、HAPの自己組織化を起こさせることがこの研究のもう一つの目的である。水熱抽出物を添加したリン酸水素二アンモニウム水溶液に対し、硝酸カルシウム水溶液をビュレットを用いて滴下して白色の沈殿を得た。この際、pHは水酸化ナトリウム水溶液を用いて任意の値に保った。生成した沈殿は800℃で3時間熱処理もまた行った。pH=10で生成した沈殿およびその焼成後の試料は、XRD分析の結果HAPであることが確認された。HAPは骨組織の再生用材料やたとえば歯磨剤として用いられる。これはHAPの高いタンパク質吸着性能に由来する用途であるので、HAPのタンパク質(アルブミン)の吸着実験を行った。市販の吸着材用のHAPは、今回の吸着実験条件での吸着率は60%焼成であった。一方、この研究での焼成後のHAPは52%、未焼成HAPは43%であった。しかしながら、現在のところ電子顕微鏡観察では明確な自己組織化能に由来する形状の特異性効果は観察できていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
抗酸化性評価は期待通りの進捗状況と結果であり、25年度の知財化を進める。一方HAPの自己組織化に関しては、24年度の実験条件の中では、比較的高いタンパク質吸着能のある試料を得られたが、自己組織化による結晶の特異性の発現には至らなかった。これまでの研究蓄積と代表者が出願している特許から炭酸カルシウムで得られた自己組織化が、HAPではさらなる研究上の改善を要することが明らかになっている。24年度中の抗酸化性に関する知財申請を予定していたが、現在のところそこまでは進んでいない。ただし、新規性の評価は済んでいる。 こうした観点から「やや遅れている」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
抗酸化性に関しては知財の申請を進める。25年度は蛍光顕微鏡を購入する。これは、抽出物のタンパク質吸着性を画像として評価するために重要である。HAPはコラーゲンと複合化して骨になるのであるから、HAPへのコラーゲンなどタンパク質の析出を画像で確認することで、HAP結晶による生体修復効果を考察することが可能になる。 一方で、自己組織化能を発現させることが今年度の課題である。自己組織化にはHAPを構成するリン酸イオンとカルシウムイオンが過飽和状態になる必要がある。24年度からの課題の改善点として、過飽和状態を実現するより静的な沈殿生成条件にすることを検討することになる。また、生体用材料としての機能性を意識したHAP結晶の薄膜化、多孔質化を進める。このため、ガラス基板上へのHAPの析出をモデル反応とする。 LCA(ライフサイクルアセスメント)による環境負荷の低減効果の検証と貝殻の現在の再資源化コストに対して、貝殻中の有機物を原料とする抗酸化剤やHAP原料への再資源化が加わった時の、全体コスト計算もまた進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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