研究課題/領域番号 |
24561017
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研究機関 | 函館工業高等専門学校 |
研究代表者 |
小林 淳哉 函館工業高等専門学校, 物質環境工学科, 教授 (30205463)
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キーワード | 蛍光体 / 燐光 / 水熱抽出 / 抗酸化性 / 付加価値 |
研究概要 |
ホタテ貝殻を120℃~150℃でオートクレーブを用いて水蒸気抽出して有機物を得た。この有機物を蛍光マーカーとして用いるための蛍光特性を調査した。その結果は、青色の蛍光マーカーとしての用途が考えられたが、既存のマーカーに比べまだ強度は弱く、現状として既存品を凌駕する性能は得られていない。しかし、この研究・調査の中で、発見された新規の特性もあり、それは抽出物が「燐光」を示すことである。このため、燐光を示すことによる特異的な用途が提案できる可能性がある。燐光スペクトルを調査したところ、粉末では緑色、水溶液とすると青色の波長に相当することがわかった。 抽出物の抗酸化性も併せて検討することが本研究の当初からの目的である。このため、水熱抽出物をスプレードライにより乾燥させ、その抗酸化性をロダン鉄法で確認したところ、食品添加用の抗酸化剤として広く活用されているローズマリーの抗酸化性の約80%に相当する抗酸化性を持つことを明らかにできた。抽出物は水溶性で非脂溶性であることから、食用油の抗酸化剤としての用途は制限される可能性がある。そこで、脂溶性処理した蛍光体を作成したところ、水溶性の抽出物の場合と同様にローズマリーの抗酸化性の約80%に相当した。 26年度はよりマイルドな条件下での抽出を行い、その蛍光特性や用途の検討、抗酸化性の把握を行う。 貝殻抽出物にはタンパク質が含まれている(ただしこの研究での水熱抽出時にはペプチドになっている)。これを医療用材料あるいは吸着剤としての付加価値の高いハイドロキシアパタイト(HAP)の自己組織化による結晶成長のために用いる研究も行った。抽出物を用いると、HAP結晶の有機物吸着能はわずかに向上したが、特異的な結晶成長効果はみられていない。これはHAPの沈殿を加熱処理した段階で焼結が進んでしまうためである。そこで26年度は熱処理方法を再考する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
抗酸化性の評価は順調に進んでいるが、蛍光マーカーとして当初予測したような特性は得られておらず、当初の計画に盛り込んでいない貝殻抽出方法の検討も並行して進める必要が出てきたことで、やや計画に遅れが出ている。 また、HAP合成は、炭酸カルシウムの再結晶時に見られた抽出物添加の自己組織化能が結晶形状の特異性というかたちでは明確にできていない。このため、HAP合成方法の条件検討にさらに時間を要していることがその理由である。
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今後の研究の推進方策 |
貝殻らの有機物の抽出方法を超臨界抽出法を併用する。これは、タンパク質の分解を防ぐことに効果があると考えている。 燐光が新たに発見できたことは大きな成果であり、「燐光体スペクトル」を詳細に明らかにし、用途を考えていくことになる。
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