研究課題/領域番号 |
24561018
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 鈴鹿工業高等専門学校 |
研究代表者 |
下古谷 博司 鈴鹿工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (90249805)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 廃棄系バイオマス / 再利用 / 吸着 / マイクロ波加熱 / 液状化 |
研究概要 |
廃棄系バイオマスとしてオカラを使用し,このオカラのもつ可溶性色素吸着能と重金属イオン吸着能について評価した。可溶性色素としてはオーラミン色素を使用し,オカラに対する基本的吸着条件(pHの影響やオカラ使用量と色素吸着能の関係など)について検討した。また,重金属イオンの吸着については,試料として,亜鉛イオンやストロンチウムイオンを用いて,色素吸着能と同様に重金属イオン吸着の可能性について検討した。その結果,いずれも比較的良好な結果が得られた。廃棄系バイオマスであるオカラに対して,これまで検討してきた結果をまとめるとオカラは,カオリン懸濁液中のカオリン懸濁粒子を凝集沈殿させる能力と有色溶液から可溶性色素を吸着できる能力並びに溶液中に溶存している亜鉛イオンなどの重金属イオンを吸着できる能力の三つを兼ね備えていることが明らかとなった。現時点ではこれら3つの能力を示す成分が同一のものであるのか,あるいは,独立した成分であるもかは不明である。今後明らかにしていきたい。 一方,廃棄系バイオマスのマイクロ波加熱法を利用した液状化に関する研究については,タケ粉末を試料とし最適液状化条件等について検討したところ,通常のヒーターや油浴などを使用した外部加熱法に比べ短時間で液状化できることが分かった。また,このことはマイクロ波加熱法が通常使用されている外部加熱法に比べて省エネであり有利であることも示している。以上のことから,本研究は概ね予定通りに進行している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,廃棄系バイオマスを用いた環境に優しい高性能多機能水処理剤への応用を考えている。平成24年度は試料としてオカラ等を使用し可用性色素吸着能や重金属イオン吸着能を有することを明らかにしており概ね計画通りに進行している。これまでに得られた検討結果を考察するとオカラには凝集能,可溶性色素吸着能,重金属イオン吸着能の少なくとも3つの機能を有していることが明らかとなりつつあり,当初の計画に沿って進行しており,環境に優しい高性能水処理剤への展開としては「研究の目的」の達成度はおおむね順調に進展していると言える。 一方,化学を変えると言われるほど急展開を見せているマイクロ波加熱法を用いた廃棄系バイオマスの液状化に関する検討事項についても,タケ粉末などを試料としヒーター等を利用した外部加熱法に比べ短時間で効率よく液状化できることを明らかにしており,液状化に関しても「研究の目的」の達成度はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
オカラには凝集能,可溶性色素吸着能,重金属イオン吸着能の少なくとも3つの機能を有していることが分かってきた。しかしながら,各機能を調べるにあたり対象とした可溶性色素や重金属イオンの数は決して多いとは言えず25年度も対象試料を変えて実施し多機能水処理剤としての付加価値を高めていきたい。また,各機能に関与している成分がどのようなものであるのかは不明であるため,酸分解法などの各種手法を用いてその正体について調べていきたい。さらに,オカラなどの廃棄系バイオマスを利用した水処理剤の能力が,現在汎用されている活性炭に比べてどの程度のものなのかを比較検討するとともに可能であれば実廃水等に適用しその能力の検証を実施したい。 一方,廃棄系バイオマスのマイクロ波加熱法による液状化については,得られた液状化物を原料とし多価イソシアナート化合物と反応させポリウレタンを合成する。次いで,得られたポリウレタン材料の引張り強度等の機械的性質について検討し木材由来のバイオマスから得られたポリウレタン材料が有する性質と比較検討したい。また,近年注目されているイオン液体を溶媒に用いて廃棄系バイオマスの分解挙動について調べ最適分解条件等を明らかにしたい。さらに,可能であればリサイクル困難とされるFRPのイオン液体を用いた化学的再利用についても検討したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は,次年度使用額として89145円を残すこととなった。これは,年度末に購入予定であった外国製の試薬の在庫が日本国内に無いことが判明し納品が25年度になったためである。 平成25年度は,廃棄系バイオマスによる可溶性色素や金属イオンに対する吸着能を評価するために,また,関与している成分がどのようなものであるのかを分析するために比較的多量の試料を取扱う必要がある。そのため,物品費として評価関係あるいは分析関係の装置の購入を考えている。また,各種反応に使用する試薬やガラス器具等の消耗品を購入するための費用やシンポジウム等で成果を発表するために必要な旅費並びに成果を論文として投稿する際に必要となる費用を計上する予定である。
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