研究課題/領域番号 |
24561021
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
田口 明 富山大学, 水素同位体科学研究センター, 講師 (40401799)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | メソ多孔体 / トリチウム / 回収 / 濃縮 |
研究概要 |
低濃度トリチウム水から高効率でHTOを分離,濃縮する吸着材は,環境負荷の低減,トリチウムの再利用等の観点からその実現が望まれている。しかしながら,既存の吸着材はトリチウム濃縮特性が低く,温度,圧力,ガス流量等,化学工学的な対応が主となっている。もし,トリチウム選択性を付与した吸着剤を設計できれば,濃縮特性の向上が期待できる。これまでのHTO濃縮に関する文献を精査すると,吸着材のアニオン性の制御がトリチウム濃縮の鍵と推察される。そこで本研究ではカルボキシル基,スルホ基などのアニオン性有機官能基を導入したメソ多孔体を合成し,固-液系,及び気-固系のHTO吸着・脱着特性の評価を行い,トリチウム選択性を付与した高機能トリチウム濃縮材料の開発を目的とした。 ここでは,シリカメソ多孔体(SBA-15)を担体に用い,その細孔内をカルボキシル基,スルホ基,アミノ基を有するシリル化材で修飾した。これら有機官能基の導入は,XRD,N2吸着測定,FT-IR,熱分析から確認し,SBA-15の構造は保持されていること,また,有機官能基の修飾密度は約1個/nm2であることを確認した。続いて,合成した有機修飾SBA(0.5 g),トリチウム水(約500Bq/mL)を用いて,固-液トリチウム吸着を行った。その結果,カルボキシル基,スルホ基,アミノ基修飾SBAのトリチウム分離係数はそれぞれ,1.17,1.18,1.17と見積もられ,未修飾SBA-15(1.21)と同等のトリチウム吸着特性を有することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の鍵となる有機修飾メソ多孔体の合成を検討し,その調製条件,生成物の基礎物性を明らかにすることができた。さらに,固-液トリチウム吸着能を比較することが出来たことから,おおむね順調に進展している。今後得られた吸着剤について,トリチウム脱着試験からその濃縮特性を評価することが重要である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き有機官能基を導入したメソ多孔体の合成とそのHTO吸着特性の評価,及び吸着能の向上を検討する。ここでは,細孔径の異なるSBA-15あるいはMCM-41を担体として使用し,固-液HTO吸着特性を評価し,細孔径の効果を検討する。当年度は,昇温脱着装置を用い,脱着条件における濃縮特性を評価する。ここでは,上で得られた吸着材にトリチウム水を含浸し,所定の昇温速度で脱着試験を行い,HTO脱着量から,脱着挙動を調査する。さらに吸着材の重量減少を基に,脱着したHTO濃度を算出し,その濃縮係数を算出する。 また,cold条件において,得られた吸着材の耐熱性,耐久性を評価する。すなわち,H2Oの吸脱着を複数回繰り返し,TG-DTA,XRD,N2吸着,FT-IR測定等から吸着材の構造変化,物性変化を明らかにする。また,脱着後の吸着材についてXRD,N2吸着,FT-IR測定から吸着材の構造変化,及び物性変化を確認し,その耐熱性を評価する。さらに,D2Oを用いたFT-IR測定を行い,昇温脱着によるOH及びODに関する赤外吸収振動の変化から吸脱着機構を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の予想以上に試料合成が簡易であったため,試薬類の購入量が減少すると共に,予定した設備の購入を変更した。 一方,今後,トリチウム脱着装置の制作が必要であり,電気炉(200千円),温度調節機(200千円),記録計(300千円)の購入を予定しているほか,真空ポンプ(100千円),乾燥機(200千円)等の新規購入を検討する。また,国際学会に2度出席する予定である。
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