本年度は有機修飾SBAについて,176.5kBq/mLのトリチウム水を用い,脱着試験からトリチウム濃縮特性を評価した。初めに,合成した有機修飾SBAにトリチウム水を含浸し,Ar気流中,25℃で24時間静置し,トリチウム水の脱着挙動を測定した。SBA-COOH,SBA-NH2では5時間以内に含浸したトリチウムの90%以上が脱着した。これに対し,未修飾SBAでは24時間まで継続的なトリチウム脱着が観察された。SBA-SO3Hではこの中間であった。トリチウム脱着量と重量減少から算出した24時間経過後のSBA-COOH,SBA-SO3H,SBA-NH2,及び未修飾SBA-15から得られるトリチウム水はそれぞれ166.0,162.2,164.3,及び158.0 kBq/mLであった。これらの値は含浸したトリチウム水濃度と比較して減少しており,すなわち,トリチウムは脱着せずに吸着材に吸着していることが示唆される。続いて,250℃まで昇温脱着を行った。各吸着材とも,トリチウム脱着量は100℃から150℃で大きく減少し,その後増加した。トリチウム脱着量と重量減少から算出した250℃までの,脱着トリチウム水の濃度はそれぞれ84.0,202.8,213.8,182.6 kBq/mL相当であった。この値は初期トリチウム濃度に対して,それぞれ0.52,1.23,1.35,1.10倍にあたり,SBA-SO3H,SBA-NH2から高い濃縮率でトリチウム水が得られることが示唆される。一方,SBA-COOHでは昇温脱着でもほとんどトリチウムが脱着されない,興味深い知見も得られた。
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