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2012 年度 実施状況報告書

STOR-Mトカマクの外側垂直磁場コイルと非線形素子によるプラズマ電流延長実験

研究課題

研究課題/領域番号 24561026
研究種目

基盤研究(C)

研究機関東海大学

研究代表者

御手洗 修  東海大学, 熊本教養教育センター, 教授 (00181925)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワードトカマク実験 / 鉄心 / スフェリカルトカマク / 電流立ち上げ / 国際研究者交流 / カナダ
研究概要

本研究の目的は,スフェリカルトカマク(ST)核融合炉において中心ソレノイドなしでプラズマ電流をスタートさせるための基礎的な研究をカナダ,サスカチュワン大学の鉄心付きSTOR-Mトカマクにおいて行うことである.非線形素子である鉄心を有したトカマクにおいて,プラズマ外側に設置した垂直磁場コイルを用いて,中心ソレノイドなしでプラズマ電流をスタートし,鉄心が飽和した後もプラズマ電流を維持制御できるかの実験を行い,その可能性を研究することである.
まず第一に,トカマク装置が正常に動作することを確認し,中心にあるオーミックコイルと主垂直磁場コイルの接続を切り離す作業を行い,外側オーミックコイルのみとした(これを外側垂直磁場コイルと呼ぶ).プラズマがない状態で,外側垂直磁場コイルに電流を流し,そのときに鉄心の磁束を測定し,ヒステリシス曲線を調べた.
次に,プラズマ生成実験を行い,簡単にプラズマが生成され,10kA程度のプラズマ電流が流れるのを確認した.外側垂直磁場コイル電流にバイアス電流を流すと放電時間が長くなりプラズマ位置のフィードバック制御が難しくなり,鉄心が飽和する前に放電が終了するので,バイアスをかけずに実験を行うことにした.そこで第3バンク放電回路を製作し,鉄心が飽和しつつあるフェーズで追加の放電が行えるようにした.その結果,外側垂直磁場コイル電流に電流を流すと,プラズマ電流が若干増大しパルス長が長くなるという世界で初めて中心ソレノイドのない鉄心トカマクにおいて,鉄心の未飽和から飽和の遷移領域において空心コイルに近い状態でプラズマ電流を維持できることを示した.
これは中心ソレノイドの設置が困難なST炉において,小さい鉄心を用いて,プラズマ生成,電流のランプアップ,引き続き鉄心から空心コイルへと移行できるST炉の可能性を示した点において,世界に先駆けた研究結果である.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

(1)本実験の正否を左右する外側垂直磁場コイルによる鉄心のヒステリシス特性を測定することができた.これによって鉄心の磁気特性を詳しく知ることができるようになり,本実験を進める上で有効であった.また鉄心の状況がわかり,実験結果の正しい解釈が可能となった.(2)実験前に行っておいた回路計算をさらに詳細に検討した結果,垂直磁場を余分に生成している主垂直磁場コイルを切り離す方がよいことに気づき,切り離した.プラズマ位置は真空容器上に設置したフィードバック用の垂直磁場コイルで制御することにした.(3)放電時間が長くなると徐々にプラズマ位置の制御が困難になるので,フィードバック制御が可能な時間内に鉄心を飽和させるためにバイアス電流をかけないことにした.このことが第一年目の鉄心飽和実験の成功の鍵となった.(4)以前に準備しておいた第3バンク用コンデンサーと放電回路を他の用途に転用されていたため,今回急遽製作する必要があった.約10日間かかって製作し,テストを行い放電に成功した.こうして製作した第3バンク放電回路が最後にやっと正常に作動したため目的のデータを取得することができた.
得られたデータは2013年9月にバルセロナで開かれるISFNT(International Symposium on Fusion Nuclear Technology)国際会議にて,O. Mitarai, Y. Ding, M. Hubeny, et.al., The plasma current sustainement after iron core saturation in the STOR-M tokamak.というタイトルで発表する予定である.
従って,「研究の目的」の達成度はきわめて良好である.

今後の研究の推進方策

第1期の実験が成功裏に終わったことをうけて,さらに以下のような確認実験,詳細な実験,拡張実験を行うことを計画している.(1)鉄心のサイズのパラメータを測定し直し,実際の鉄心の飽和がどこからスタートしているかを調べる.鉄心のヨーク部で測定しているループ電圧を,全く同じ距離の別の場所で測り比較することで,第3バンク印加時での鉄心の影響がどの程度あるかを詳細に調べる.(2)さらに第3バンクのコンデンサー容量,コンデンサーの充電電圧を増強し,若干のプラズマ電流の増大化と,パルス長の延伸化をはかる.(3)バイアス電流のありなしでの放電を比較し,鉄心の未飽和と飽和時の比較検討を行う.(4)さらにバイアスをかけてプラズマ電流の増大化と鉄心の飽和実験を行う.(5)鉄心飽和中のプラズマ位置を外部から制御し,放電のさらなる改善を図る.(6)鉄心飽和中のプラズマ位置を磁気プローブで計測しているが,同じ磁気プローブを鉄心未飽和時にも使用しているためにその測定の精度を明らかにするために,別の方法で測定する必要がある.(7)外側垂直磁場コイルの巻き数を1巻き増やして,15kA台のプラズマ電流が得られるように追加改造を計画している.
さらに将来的には以下のようなことが考えられる.鉄心が飽和後にプラズマ電流をさらにランプアップする実験は本トカマク装置では不可能である.何故ならECRH加熱によってプラズマを加熱し,同時に外側垂直磁場コイル電流をさらに増加させねばならないからである.そのような実験を行うには新しい装置を製作しなければならない.サスカチュワン大学の今後の計画が未定のために,そのような実験を行うには例えばEUのJETやTORE SUPRAといった鉄心とECRHを有する装置を活用することも念頭に入れる必要がある.

次年度の研究費の使用計画

2013年度の研究費の使用計画は,カナダ,サスカチュワン大学において実験を実行するために,
・10万円程度の消耗品の購入,
・カナダ,サスカチュワン大学への渡航費と滞在費,
・2012年度研究結果をISFNT国際会議で発表するための旅費と滞在費,
に使用する予定である.

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2013

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] The plasma current sustainement after iron core saturation in the STOR-M tokamak2013

    • 著者名/発表者名
      御手洗 修
    • 学会等名
      ISFNT(International Symposium on Fusion Nuclear Technology)国際会議
    • 発表場所
      スペイン,バルセロナ
    • 年月日
      20130916-20130920

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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