研究課題/領域番号 |
24561027
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
剣持 貴弘 同志社大学, 生命医科学部, 准教授 (10389009)
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研究分担者 |
和田 元 同志社大学, 理工学部, 教授 (30201263)
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キーワード | 炭素ダスト / 赤外線吸収分光 / プラズマ壁相互作用 |
研究概要 |
本研究で開発した小型炭素ダスト装置で生成された炭素ダストの表面形状と内部構造を,走査型電子顕微鏡で観察した.μmオーダーの球形の炭素ダストが多く観測され,球形の形状から,炭素ダストは,炭素壁表面から放出された炭化水素分子が気相中で成長したものと考えられる.また,炭素ダストの内部構造については,自然に割れている炭素ダストが観測された.これは,大気解放によって圧力差が生じ,微粒子内部で残留応力が加わったこと考えられる.炭素ダストは球状の中心部から割れており,断面を見ると,垂直方向に放射状に成長しているように見える.このことから,μmオーダーの微粒子成長はカラムナー(柱状相)成長であると推測される. また,炭素ダストの粒子径の経時変化についても実験を行い観測した.本研究では,走査型電子顕微鏡で取得した画像を,画像解析ソフトimageJを用いた画像解析から粒径を測定した.実験結果から,放電時間が長くなるにつれて,粒径の大きい炭素ダストの比率が多くなり,また,粒径分布は粒径サイズが大きくなるにつれて,線形的に減少することが分かった. 炭素ダストの平均粒径は時間の1次に比例しており,実験結果から,炭素ダストの平均成長速度は0.21 μm/h程度となると考えられる. さらに,炭素ダストの時間的な成長過程を調べるために,本研究で開発した炭素ダスト生成装置に設置可能な赤外線吸収分光システムの設計,および製作を行った.製作した赤外線吸収分光装置を用いた予備実験では,得られた吸収スペクトルに多くのノイズが含まれており,現状のシステムでは,実験の遂行が困難であるため,このノイズを低減するために、赤外線吸収分光システムを改良する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の研究目的は,炭素ダストの時間的な成長過程を観測できる測定方法の開発と,その成長過程のモデル構築である.今年度までの研究で,炭素ダストを生成できる装置を設計,製作し,炭素ダスト生成実験を行うことができた.実験結果から,本実験で生成されたµmサイズの炭素ダストは,走査型電子顕微鏡による観測によって,球形の形状が殆どであることから,実験装置内の気相中で成長したものと考えられる.また,自然に割れた炭素ダストも観測され,断面の様子から,炭素ダストの成長過程は,カラムナー(柱状相)成長であると考えられる.炭素ダストの成長過程については,成長モデル構築に関して,有益な実験データを得ることができた.一方,炭素ダストの時間的な成長過程を測定する方法については,赤外線吸収分光法を用いることを検討しているが,予備実験では,赤外線吸収スペクトルにノイズが多く,このノイズを低減する必要があり,現在赤外線吸収システムの改良を検討している.
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今後の研究の推進方策 |
本研究では,炭素ダストの時間的な成長過程を測定するために,赤外線吸収分光法を用いることを考えているが,予備実験では,吸収スペクトルに多くのノイズが含まれており,現状の赤外線吸収分光システムでは,成長過程の測定は困難である.吸収スペクトルに含まれるノイズを低減するために,現在システムの改良を検討中である.システムの改良後,赤外線吸収分光法によるデータが得られた場合,これまでの実験データと比較検討をし,炭素ダストの時間的な成長過程のモデル構築を図る.
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次年度の研究費の使用計画 |
炭素ダスト生成装置の炭素内壁の損耗が、当初予測していたものより少なく、炭素内壁の交換をする必要がなかったため。 主に,赤外線吸収システムの構築費用と、炭素ダスト生成実験に使用する、水素ガス、炭素内壁の購入費用に使う予定である.
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