研究課題
基盤研究(C)
検出器形状最適化のために荷電粒子軌道計算を行い、それに基づいて新しく多チャンネル検出器を製作した。予備実験として、運転が容易な低エネルギービーム(30keV)を用いて性能試験を行った。この試験により、ビーム位置分解能、及びチャンネル間のクロストークに関しては、検出器として必要な性能を満たしていることを確認した。この後、実際に用いる6MeVビームを用いた試験を行う予定であったが、3MVタンデム加速器に故障が発生し、長期間の修理が必要になったため、検出器の試験は次年度に延期することになった。プラズマ実験は従来の検出器を用いて行ったが、ビームライン制御系の改良や、新しいデータ解析手法の適用などを進めた。これにより、高速イオン励起帯状流に伴う静電ポテンシャル揺動と密度揺動の空間構造を明らかにすることができた。また、同時に測定したイオンのエネルギースペクトルの時間変化からイオンと帯状流の間のエネルギーのやり取りを明らかにした。また、測定したイオンのエネルギー分布を考慮することにより、これまで説明できなかった高い周波数を持つ帯状流が理論的にも存在しえることを明らかにした。これらの結果を第24回核融合エネルギー会議にて報告した。また、電子密度を100ミリ秒程度の時定数で緩やかに上昇させた際に、ある時刻において電場が数100マイクロ秒程度の時定数で急激に変化する現象がLHDにおいて初めて確認された。これはこれまでにCHSにおいて観測された電場遷移現象に対応する可能性があり、これまでCHSの結果に基づいて構築されてきた電場形成に関する理論モデルの検証につながると考えられる。
3: やや遅れている
検出器開発の面では軌道計算に基づく設計、製作と、その予備的な試験による性能の確認を行うことができた。しかしながら、今年度は検出器開発のための基礎データを取得する予定であったが、3MVタンデム加速器の故障により、データ取得ができなかった。一方、プラズマ実験に関しては、本研究のターゲットの一つである高エネルギー粒子駆動帯状流の同定と、高速の電場遷移現象の検出を行うことができた点は順調に進んだと言える。
平成24年度に行えなかった検出器の性能試験を行い、実機への適用に向けた改良を行う。加速器の故障により開発が遅れたため、共同研究などを利用して開発の効率化を進める予定である。検出効率と周波数応答性が十分であると判断できた段階でプラズマ実験用の実機に組み込む。プラズマ実験では電位揺動と密度揺動の周波数スペクトルを計測し、乱流計測の可能性を吟味する。可能と判断されれば、当初予定していた(1)高速イオン駆動モードのバルクプラズマへの影響の評価、(2)速い電場遷移現象の解明、(3)乱流・帯状流の検出、を進める。そうでない場合は、原因の究明をすすめ、検出素子の変更も含め検討する。その際、プラズマ実験に関しては、現時点で観測できている、高速イオン励起帯状流や電場遷移現象を、2次元構造計測などの新しい手法を用いて詳細に調べる。
検出器の周波数応答性を調べるために必要な高速応答が可能な高圧電源を購入する。また、実際に用いる高エネルギービームを用いた試験の結果に基づき検出器の改良を進める必要があると考えられるため、その製作費としても研究費を使用する。旅費としては、平成24年度に得られた研究成果の発表のために、国内及び国際学会へ参加するために使用する予定である。
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