研究課題/領域番号 |
24561032
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
田中 将裕 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (00435520)
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キーワード | 合成ゼオライト / マイクロ波加熱 / シングルモード共振器 / 熱重量分析 / トリチウム安全取扱い / 核融合炉 / ハニカム |
研究概要 |
トリチウムの安全取り扱いでは、室内などに漏洩したトリチウムの迅速な回収処理が求められる。トリチウムの回収では、触媒で水の化学形態に酸化し、吸湿回収する手法が一般的である。吸着剤[吸湿剤]は吸着容量があるため、破過する前に加熱による再生処理が必須である。本研究では、低圧力損失であるハニカム型ゼオライト吸湿剤を取り上げ、マイクロ波を用いた効率/迅速な加熱再生処理の適用を提案している。マイクロ波加熱法では、シングルモード加熱法を採用し、電場加熱(TE モード)と磁場加熱(TM モード)の加熱機構の違いに着目し、ゼオライト吸湿剤への影響、加熱特性を明らかにすることを目的とする。 平成25年度には、TM モードによるマイクロ波加熱研究を行うため、平成24年度に製作したシングルモードマイクロ波加熱装置の一部を改造した。この装置ではロードセル、赤外放射温度計(3台)、電力計を用いて試料重量/表面温度/マイクロ波入力エネルギーの変化を測定した。また、TMモードのインピーダンス整合のため、ベクトルネットワークアナライザと酸化鉄試料を用いて調整を行った。評価試料には、昨年度と同じハニカム型5Aゼオライトを、相対湿度80%の恒温槽で、飽和状態まで水分を吸着させて再生実験を行った。 評価の結果として次の結論を得た。1. TMモードではマイクロ波エネルギーの吸収が15W程度であり、ほとんど吸収されない。2. マイクロ波エネルギーの一部は吸湿剤周辺部で誘電加熱により吸収されて、試料温度が上昇することが示唆された。その際の試料温度は最大でも70℃程度であった。3. 温度上昇により吸着水の一部が脱湿した。4. 1時間のマイクロ波照射でも試料を完全に再生することはできなかった。5. TMモード加熱[誘導加熱]よりも、TEモード加熱[誘電加熱]による吸着水分の直接加熱が有効であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度に整備したシングルモードマイクロ波加熱実験装置の一部を改造し、電場加熱[TEモード]および磁場加熱[TMモード]試験が実施できるようにした。この改造した装置を用いて、平成25年度の研究目標としたハニカム型ゼオライト吸湿剤のTMモードによる加熱試験を実施した。平成24年度に得られたTEモードによる加熱試験結果と比較検証により、加熱モードがハニカム型ゼオライト吸湿剤の再生処理に影響を与えるデータを取得できた。得られた研究成果について、国際会議でポスター発表をした。また、昨年度の研究成果について学術論文1報が掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
平成24、25年度は、TEモードおよびTMモードを用いたマイクロ波加熱手法により、吸湿剤の再生処理の比較データが取得できた。平成26年度は当初の予定通り、繰り返しマイクロ波照射による吸着試料への劣化影響試験、吸湿剤中の水分量の影響評価に着手する。これまでの実験研究を通じて、TEモードによる加熱再生が有効であることがわかったので、TEモード加熱でマクロ波整合を調整して試験を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
申請時には平成25年度に計画しているTMモード試験のために、シンプルモード共振器全体の新規製作が必要と考えていた。しかし、平成24年度に製作した装置構造を詳細に検討したところ、共振器の一部を改造することでTMモード試験に対応可能であることがわかった。そのため、想定していた研究経費[物品費]を低く抑えることができ、次年度への繰越額が生じた。 平成26年度は、ハニカム吸湿剤試料への繰り返し照射試験を実施するため、消耗品として窒素ガスの購入に使用する。また、マイクロ波入力エネルギー測定を、カロリーメトリ法によって校正された測定素子に代えて、正確な平均電力測定が可能なマイクロ波パワーセンサの購入に使用する。
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