研究課題/領域番号 |
24561033
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
磯部 兼嗣 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 核融合研究開発部門, 研究副主幹 (00354613)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 水素 / 構造材料 / 材料加工・処理 / 水素同位体 |
研究概要 |
平成24年度は、重水素を用いた水素透過挙動を測定するための透過試験装置を整備した。装置は、片端に封を施したSUS304ステンレス鋼管内部に重水素を供給し、それを真空チャンバー内で加熱することで、チャンバー側に透過してきた重水素を四重極質量分析計で測定できる構造とした。また、評価の基準となる溶接を施さない状態のSUS304ステンレス鋼管試験体(均質材)を作製し、前述の装置を用いて0.1MPaの重水素分圧で、150℃から450℃の温度範囲で重水素の透過を測定した。200℃以下の温度では重水素の透過は検出下限であったが、250℃以上の温度では重水素の供給から定常透過となるまでの経時変化を取得する事に成功し、溶接を施した場合の透過挙動に与える影響(溶解度、拡散係数等)を評価できる事を確認した。また、質量分析計の測定結果から透過量を評価可能とするため、標準リーク源を使用した校正を実施した。これにより評価された本実験の定常透過量は、これまで報告された文献値の範囲内であることが明らかになり、本装置を用いた透過量の測定が妥当であることがわかった。さらに、溶接を施した不均質材のTIG溶接条件を選定するため、本年度作製したSUS304ステンレス鋼管試験体の幾つかに円周方向に溶接を施した試料を作製し、溶接条件による熱影響部の関連性評価を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
重水素透過試験装置の整備を当初の計画通り平成24年度内に完了し、評価の基準となる溶接を施さない状態のSUS304ステンレス鋼(均質材)の透過測定を実施する事ができた。また、TIG溶接を施した不均質材料では、試験体に施行する溶接条件を選定するため、現在評価を実施している段階であり、当初計画した平成24年度の研究実施計画に沿って、おおむね進行している。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度作製した不均質材料(TIG溶接材)の熱影響部の評価を進め、溶接条件を選定後する。その後、試験体の円周方向に熱影響部の重なりが無いようなTIG溶接を複数施工した試験体を作製し、TIG溶接が存在する場合の透過挙動を、試料温度をパラメーターとして測定する。溶接の影響は、溶接数の異なる試験体を準備し、それぞれの透過挙動を見ることでも定量的に把握する。また、試験体内部、特に溶接により熱影響のあった部分の水素分布を同定するため、今後トリチウムを用いた可視化技術(イメージングプレート法、オートラジオグラフ法等)の適用を試みる。そのため、平成25年度は電解チャージ法によりトリチウム導入する装置を整備する。
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次年度の研究費の使用計画 |
重水素透過装置を整備するにあたり、これまで使用してきた転用予定の機材に故障があり、この購入を優先させるため、不均質材の製作を次年度ととし当該研究費が生じた。次年度は不均質試験体の追加作製及びトリチウム導入装置の整備、またフランスで開催されるトリチウムに関する国際会議での成果発表に当該研究費と請求する研究費を使用する計画である。
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