研究課題/領域番号 |
24561037
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
岡本 一将 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10437353)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | レジスト / パルスラジオリシス / 放射線、X線、粒子線 / 放射線化学 |
研究概要 |
高分子に対する放射線照射応答性に関する研究は、原子炉や宇宙空間での耐放射線性問題の解決や高分子の改質・機能化といった様々な応用展開に利用されている。近年、その新たな産業応用として考えられるのが、半導体・通信産業の発展を支え続けるリソグラフィ技術への適用である。本研究は、様々な用途が期待される極薄膜高分子中での放射線化学反応を明らかにするために、自由電子レーザー等の有する高輝度・短パルス性がレジスト性能に与える影響や固体中で誘起される放射線化学反応明らかにするための研究を行った。 極端紫外自由電子レーザーの照射エネルギー密度を変化させて電子線レジスト(ZEP520)薄膜へと照射し、現像プロファイルへの依存性を調べることによって、微視的なイオン化反応がレジストプロセスへ引き起こす影響について調べた。その結果、誘起される分解・架橋反応の割合が、レジストの深さ方向で変化するスパー間距離(初期イオン対間距離)に影響されることが明らかとなった。また、上記の現象の理論的な解釈のため、モンテカルロシミュレーションを用いたレジスト内の放射線化学反応のシミュレーションを開始した。 また電子線パルスラジオリシスを用いて、固体高分子中の電荷ダイナミクスについて明らかにするために、レジストモデル化合物の濃度を高めることによって擬似的な固体レジスト状態を再現し、その過渡吸収測定を行い、ポリ(4-ヒドロキシスチレン)のラジカルカチオンからの脱プロトン反応が溶液に比べ遅くなることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目的である薄膜高分子中の局所的イオン化反応について、計画通り実験的に明らかにすることができたとともに、薄膜内のイオン化反応のシミュレーションを行うことにより、理論的な解釈を次年度以降行えるようになった。さらに固体サンプルをパルスラジオリシスで測定できる手法を確立することによってより詳細な放射線化学反応の追跡が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
自由電子レーザーを用いた実験については、利用回数が限られることが予想されることから、並行して理論的なアプローチを積極的に進めるとともに電子線パルスラジオリシスによる固体サンプル中での放射線化学反応を明らかにしていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
日本化学会第93春季年会(2013年3月23日、立命館大学びわこ・くさつキャンパス)参加のための旅費として計上した。(既に執行済み)
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