研究課題/領域番号 |
24561043
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松元 達也 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90325514)
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キーワード | 熱流動 / 構造 / 安全評価 / 数値解析 |
研究概要 |
本研究は、過酷事故時の原子炉内で炉心溶融により溶融、固化したデブリが形成するデブリベッド内に混在する燃料の崩壊熱により冷却材が沸騰し、デブリの動的挙動を促し、ベッドの平坦化挙動を生じさせることを明らかにした研究の延長上にあり、さらに進展した過酷事象として、ベッド内の崩壊熱の熱除去性が損なわれ、燃料を含む固化物の再溶融が生じた場合を想定して実施した。 これまでにベッド内の動的挙動を中心に定量的なデータと知見は得たが、崩壊熱除去性損失後のベッドでの再溶融挙動や炉容器底部構造の熱的損傷に進展した際のデータと知見を得るまでには至っていない。そこで、ベッド内での崩壊熱除去損失の事象を再現するために、デブリベッド内での燃料を含む固化物の再溶融を模擬する実験装置を製作し、ベッド内の過渡的挙動の画像データ、特に微視的領域での可視化データと多点温度計測による温度データ取得を行った。 実験装置として、前・背面が内部を観察可能な幅400㎜×高さ500㎜の耐熱ガラス製、構造材をテフロン及びジュラコン製とする奥行き15㎜の矩形水槽を製作し、デブリベッド内の燃料を模擬する金属粒子を加熱するシステムとして、水槽背面からの電磁誘導加熱及び金属粒子ベッドの直流電流加熱システムを構築した。計測システムとしては、高速度カメラによる流動挙動の画像計測と多数の熱電対による多点温度計測によりベッド内での挙動特性の定量データの取得を実施した。 本研究で得られた成果は、これまでの原子炉過酷故事時の熱流動現象解明のための研究資源に新たなデータや知見を提供するものとなる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度研究については、前年度製作した実験装置を用いた電磁加熱及び直流電流加熱による本実験を実施し、高速度カメラを用いた画像データの取得及び画像解析ソフトウェアによる解析結果を得た。また、新しく導入した多数の熱電対による多点温度計測システムによる温度計測も実施したが、電磁加熱及び直流加熱による加熱手法では、熱電対を用いた温度計測において、温度信号にノイズが加わる問題を生じており、完全なデータ取得は未達成となった。次年度では、電磁加熱や直流電流加熱による加熱手法の改善と温度取得のための計測技術の改善により、精度の高い温度データの取得のための実験手法を確立する予定である。 また、粒子ベッド内でのデブリ(固体)、冷却材(液体)、冷却材蒸気(気体)による多相流熱流動と熱除去特性に関する機構論的モデルの構築については、引き続き、過去の研究資料の収集と固体-気体-液体間の相互作用に関する基本モデルについての構築を進めており、解析システムとして運用するオープンソースコードであるOpenFOAMにおける流体、固体粒子に関する解析ソルバーの本研究課題への適用性の検証を実施している途中である。また、解析システムの運用するための高性能計算機を前倒しで導入し、運用を開始した段階である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度では、平成24年度及び25年度に購入した高速度ビデオによる撮影システム及び多点温度計測システムを用いての粒子ベッド内での多相流流動挙動の画像データの取得と粒子ベッドにおける温度データとを併用して両者間の関連性を検証する。 実験では、前年度までに構築した実験システムにおける温度計測上のノイズ発生の影響を排し、高精度、高信頼性のあるデータ取得の手法を確立する。 また、デブリベッド内でのデブリ(固体)、冷却材(液体)、冷却材蒸気(気体)による多相流熱流動挙動と熱除去特性に関する機構論的モデルの構築を進め、これらの挙動を予測するための解析システムの作成を可視化による画像データおよび多点計測による温度分布データの多重の取得データによる検証を通じて行う。 解析システムについては、引き続き、既存のオープンソースコードであるOpenFOAMをベースに開発を進める。OpenFOAMでは、粒子の挙動を解析する際に必要な粒子モデルによるソルバーと冷却材の流動および炉容器構造への熱伝達や力学的作用を非構造格子モデルにより扱う有限体積法によるソルバーをカップリングして、各相間の作用モデルを組み込み形で解析システムとしての完成を目指す。また、前倒しで導入し、運用を開始した高性能計算機に解析システムでの計算負荷の増大に対応して、計算速度の向上のための計算加速用ボードの導入し、解析システムの性能向上を図る
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