本研究は、過酷事故時の原子炉内で炉心溶融により溶融、固化したデブリが形成するデブリベッド内に混在する燃料の崩壊熱により冷却材が沸騰し、デブリの動的挙動やベッドの冷却性が維持されている状態から、さらに進展した過酷事象として、ベッド内の崩壊熱の熱除去性が損なわれ、燃料を含む固化物の再溶融が生じた場合を想定し、実施した。 本研究では、実験装置として、前・背面が内部を観察可能な幅400㎜×高さ500㎜の耐熱ガラス製、構造材を耐熱樹脂製とする奥行き15㎜の矩形水槽を製作し、デブリベッド内の燃料を模擬する金属粒子を水槽背面からの電磁誘導加熱、または水槽内への直流電流印加による通電加熱とするシステムを構築した。計測システムとして、高速度カメラによる動的挙動の画像計測と多数の熱電対による多点温度計測による定量データ取得を実施した。 研究期間最後である本年度では、前年度までの研究で問題の多数の熱電対による多点温度計測システムにおける加熱手法による温度データにノイズが加わる問題に取り組んだが、問題を完全に改善するには至らず、精度の高い温度データの取得のための課題が残った。しかし、高速度カメラによる粒子ベッド内の微視的挙動の可視化データを中心とした定量データによる知見は得ることができた。 また、粒子ベッド内でのデブリ(固相)、冷却材(液相)、冷却材蒸気(気相)による多相流熱流動と熱除去特性に関する機構論的モデルの構築については、各相間の相互作用に関する基本モデルについての構築を進めてきており、オープンソースコードであるOpenFOAMにおける流体、固体粒子の挙動、熱伝達に関する解析ソルバーを利用した粒子ベッドにおける固体粒子の挙動及び熱伝達機構を解析するための解析システムとして構築し、固体粒子間の熱伝導を中心とした解析が可能なところまでは完成し、高性能計算機上で運用するまでに至った。
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