研究課題/領域番号 |
24561044
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
鈴土 知明 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, システム計算科学センター, 研究主幹 (60414538)
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研究分担者 |
山口 正剛 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, システム計算科学センター, 研究主幹 (50360417)
都留 智仁 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力基礎工学研究センター, 研究副主幹 (80455295)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 転位バイアス因子 / 照射 / スウェリング / タングステン / レニウム / 格子間原子 |
研究実績の概要 |
金属材料は照射によってスウェリングが生じる。照射の一次的な効果は原子を弾き出す微視的な現象であるがスウェリングは巨視的な現象であり、その2つの現象の因果関係を結びつけるのは容易ではない。そのメカニズムとして提案されたものの一つが転位バイアス因子である。これは転位が空孔より格子間原子を優先的に吸収することから空孔が結晶中に残留しそれが凝集してキャビティを形成するのでスウェリングが生じるというシナリオである。しかしながら、理論的に求められた転位バイアス因子から期待されるスウェリング率と実測値には大きな乖離があり、その原因を特定することがこの研究の目的であった。 我々はこれまでの理論モデルで球状の欠陥として扱われてきた格子間原子を、方向を持つダンベルやクラウディオンとして正確に扱うことでこの問題が解決できると期待し、原子論的なモデリング研究に着手した。しかしながら、このようなモデルでも上記の理論と実験の解離が埋まらず、この仮説は正しくないことが研究期間の前半に明らかとなった。これにより、我々は照射スウェリングの原因がそもそも転位バイアス因子ではないのではないかという疑問を持つに至った。そこで研究機関後半は、当初の計画を変更しタングステンにレニウムを添加するとスウェリングが抑制される現象に注目し、その原子論的なメカニズム解明を試みた。その結果、レニウムを添加すると格子間原子の運動が1次元から3次元に変化することがわかった。3次元運動の格子間原子は1次元運動するそれと比較して空孔との再結合率が高くなるので、この次元の変化がスウェリング抑制に関連している可能性が高いという結論が得られた。 この研究は新たに開始された基盤研究C「タングステン合金における照射誘起析出発生メカニズムの解明」で引き続きスウェリング実験データと比較しながら最終的な結論を得る予定である。
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