本研究では、ダイヤモンド表面へ金属イオンが吸着することに着目し、特に高レベル廃液に含まれている希土類元素を中心に吸着メカニズムの解明を行うことを目的としている。 本年度は、吸着等温式による吸着状態のXPS(X線光電子分光)によるダイヤモンドの表面元素のうち酸素、もしくは炭素が希土類イオンの吸着により結合エネルギー変化、ゼータ電位測定などによる凝集状態や帯電状態の観測など、を主に調べることを目的とした。 これまで、吸着分配係数のランタノイドパターン(横軸をランタノイドとする吸着分配係数のグラフプロファイル)をICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析計)を用いて吸着量の測定を行うことにより、データの集積に努めたところ、4つのピークを有するテトラド効果が観測された。これは、酸素ドナーと希土類イオンとの相互作用によく見られる現象であるため、ダイヤモンド表面の酸素ドナーが吸着に関与していることを見出した。 希土類イオンの濃度に対する吸着分配係数の依存性を吸着容量を確認するために行ったところ、ダイヤモンドの吸着容量は、市販品をそのまま洗浄して用いたものは、概ね0.2~0.5μモル/g程度であり、核種分離に利用するためには、表面官能基を導入することなどで、吸着容量を大きく改良する必要がある。吸着等温線については、Langmuir吸着等温式でよくフィッティングできることから、単層吸着で吸着サイトと希土類イオンが、1:1で吸着していることを明らかにすることができた。XPSやFT-IRの結果から、イオン結合的な相互作用と、静電的な相互作用が同時に観測できており、今後詳細な検討を行うための基礎データを得ることができた。
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