研究概要 |
2年目の本年は、初年度で得られた有機ウラン結合での結果に関する知見を発展させ、特に、U-N配位結合に基づく新たな4価ウラン錯体の非水溶媒中での発光現象に注目した。まずハロゲン化物、UX4 (X=Cl, Br)の合成は石英反応管において酸化ウラン粉末をCX4ガスと400℃にて、フッ化物、UF4はニッケル反応管においてUO3をHFガスと600℃にてそれぞれ反応させて合成した。ヨウ化物、UI4は定量した金属ウランターニングとヨウ素とを石英管に真空封入し、250℃昇温下で反応させて合成した。結晶相は粉体PXRDで同定した。これらの液体と粉末はアルゴン雰囲気下のグローブボックス内で接触させ溶解させた。この試料のUV-Vis-NIR(紫外可視近赤外)吸収スペクトルおよびTRLFS(時間分解型レーザー誘起蛍光分光)測定を行なった。 吸収スペクトルでは鋭い5f→5f遷移がジオキサン中で6,000-10,000 cm-1に、5f2→5f16d1遷移が16,000-37,000 cm-1に観測された。これらのスペクトルピークは既往の別の有機溶媒中における研究と対比して近い値を示した。イオン液体中では、高エネルギー側までピークが広がって検出された。化学組成が異なる結果、配位数もそれぞれ6や8となると考えられ、この状況下で特にイオン液体中では配位子の影響により空間的に軌道が広がっていると考えられる。 時間分解スペクトルからは同一試料からであっても、励起パルスからの遅延時間により変化することがわかった。これはナノ秒オーダーの発光寿命の4価錯体と数十マイクロ秒オーダーの6価錯体が混在することによるとみられる。4価錯体の発光寿命はジオキサン中で12. 8 nsイオン液体中では18.6 nsとなり、1.5倍程度長くなっていることからも上述の軌道の広がりを説明することができる。
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