研究課題/領域番号 |
24561048
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
佐藤 隆博 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 放射線高度利用施設部, 研究副主幹 (10370404)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | イオンビーム / 加速器 |
研究概要 |
数100MeV級高エネルギーイオンマイクロビーム形成時のビームの強度は、数万cps~フェムトアンペア級である。このようなビーム強度は、電流としては少なすぎるが粒子としては多すぎて測定が困難であるため、ビーム軌道の有効な計測手段が無かった。そこで本研究では、数10μmの空間分解能で、ビームの強度分布を高速に測定するイオンビームモニタの開発を目指している。具体的には、薄膜シンチレータに直付けした撮像素子によってビーム強度を測定する。このビームモニタによる測定結果を、ビーム輸送パラメータにフィードバックさせれば、困難であった高エネルギーイオンマイクロビーム強度の数時間にわたる安定化を実現可能である。 平成24年度は、ビーム強度モニタの設計と製作及び撮像素子からのデータを取得するためのプログラム開発を行った。まず、薄膜シンチレータの検討を行い、透明度と輝度が高いことと、イオンビーム照射によるダメージが比較的少ないことから、フッ化カルシウムを選択した。ただし、機械的強度が低く薄膜化が困難であることから厚さを0.5mmとした。撮像素子としては、当初高感度であることからCCD (charge-coupled device)を想定していたが、比較的安価なCMOS (Complementary Metal Oxide Semiconductor)も使用した。 CCDセンサを用いた260MeVネオンビームの照射実験の結果、100cps以下のイオン照射による発光を取得可能であることを確認できた。また、CCDセンサの替りにCMOSセンサを用いてアメリシウム241から放出されるα線を検出するオフライン試験を開始した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した計画通り、CCDとシンチレータによる装置を開発及び重イオンマイクロビームを用いたビームモニタの特性試験を行い、イオン照射による発光を取得することができた。更に、CCDセンサの替りにCMOSセンサを用いてα線を検出するオフライン試験を開始した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、サイクロトロンの高エネルギーイオンマイクロビーム形成装置を用い、260MeVのネオンビームを2μmφ程度に集束させて、ビームモニタに照射し、その検出下限と検出強度のリニアリティ、応答速度及び発光の広がりを明らかにする。また、ガンマ線によるスパイクノイズを測定し、その頻度と特徴を明らかにする。重イオンマイクロビーム及び高エネルギーマイクロビーム実験で明らかとなったイオンビームによる発光の広がり、素子ごとの感度及びガンマ線によるスパイクノイズの特徴を用いて、ビームモニタの計測結果の画像を補正し、極大部分を抽出するソフトウェアを開発する。 更に、左右2対のビームモニタによって得られたビーム強度の差からビーム軸のずれ量を算出しステアリング磁石の電流を制御するフィードバックシステムの開発を行う。その後、直線導入器により真空中で主ビームを遮らない位置にビームモニタを左右2つ配置し、高エネルギーイオンビームの強度分布の測定結果をもとに、ステアリング磁石によるフィードバック制御を行う。加えて、ターゲット部に設置した半導体粒子検出器でそのフラックスの安定度を測定するとともに、プラスチック製の固体飛跡検出器をシングルイオンヒットし、そのエッチピットから、ヒット率が向上していることを確認する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
ガンマ線によるスパイクノイズ測定の過程で、撮像素子やシンチレータが劣化していくことが想定されるため、それに合わせて撮像素子やシンチレータを購入する。 更に、左右2対のビームモニタによって得られたビーム強度の差からビーム軸のずれ量を算出しステアリング磁石を制御するフィードバックシステムの開発のために、コンピュータ、電流電源、制御ボード、真空部品を購入する。 アメリカ合衆国シアトルで開催される予定の国際会議21st International Conference on Ion Beam Analysis (IBA-2013)において、成果の発表を行う。
|