研究課題/領域番号 |
24561057
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
今村 速夫 山口大学, 理工学研究科, 教授 (60136166)
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研究分担者 |
酒多 喜久 山口大学, 理工学研究科, 准教授 (40211263)
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キーワード | 水素貯蔵材料 |
研究概要 |
(1) 水素吸蔵に関する動力学的特性の評価 真空系を備えた容量法装置および熱重量分析を用いて、水素吸蔵の経時変化や水素吸蔵速度の温度依存性ならびに水素圧依存性を検討したところ、Ca窒化物系では吸蔵温度を200 oCに上げることによってより促進され、その経時変化は初期の数分は急速に起こり、その後は徐々に進行していった。水素圧50 kPaの条件では12時間後の水素吸蔵量(H2/Ca2N)は約 0.005であることがわかった。また、Ca窒化物では含浸法によって高表面積を有す活性炭上に分散担持することにより、同一の反応条件下において吸蔵速度および吸蔵量は共に増加した。ただし、水素吸蔵の経時変化には大きな違いは見られなかったことより、分散担持することは、微粒子化に伴い水素吸蔵のための活性点を増やす効果はあるものの質的な変化には殆ど影響の無いことが予測される。さらに、水素放出は吸蔵の逆反応であるので吸蔵特性が改善できれば放出特性も向上することが期待でき、水素吸放出特性をさらに改善するため、水素を活性化できる触媒としてNi, Pt添加試料も検討している。 (2) 窒化物中の吸蔵水素の解明 前述の水素吸蔵の経時変化の仕方は、Ca窒化物中の吸蔵水素には少なくとも二つのタイプの水素が存在することが強く示唆される。このことをさらに検討するため吸蔵後の試料のFT-IRによる検討を試みているが、今のところ試料が不安定のため測定できていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
水素吸蔵後の窒化物中の水素の特性やその評価検討が遅れ気味である。 窒化物に吸蔵される水素には様々のタイプの水素種の存在が予想されるため、水素の状態や性質をFT-IRや固体NMRなどを用いて検討することを考えているが、特にCa窒化物系の試料は非常に不安定で空気中では扱えないため測定法を工夫する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 窒化物ナノ複合系材料への展開 窒化物と水素に活性を有す遷移金属や化合物とをボールミルを用いたメカニカルグラインディング法でナノ複合化することによって、水素吸放出の促進を図る。ナノ複合化については、バルクでは全く相互作用をもたないもの同志でも、ナノサイズの微結晶を分散させたナノコンポジットでは協同効果の発現によって、水素吸蔵能の増大、触媒作用による水素の活性化や吸脱着過程の促進、また粒界・界面における水素拡散や動的特性の向上など優れた水素吸蔵特性の付与が期待できる。 (2) 窒化炭素の層構造を生かした材料探索 グラファイト類似の層構造をもつ窒化炭素は、特異な層構造に基づく複合効果を生かした材料探索が期待でき水素貯蔵の向上に生かすことができる。たとえば、グラファイト類似のアルカリ金属層間化合物を合成することによって、新たな窒化炭素系水素貯蔵材料への展開の可能性を検討する。また、ボールミルによるナノ構造化や、構造欠陥の導入にともなう新たな吸蔵サイトの生成も期待できる。
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