研究実績の概要 |
風況予測用数値流体計算(CFD)コードは,粗さを考慮した乱流モデルを用いて開発した.石原らの丘陵まわりの風洞実験を解析対象として精度を検証し,良好に模擬することを確認した.久米島本島東側の離島について,最多風向の北風をシミュレートしたところ,100kW風車設置域付近は風向,風速の変化が少ないと推測された. 風車用CFDコードは低レイノルズ数型乱流モデルを採用した.デルフト工科大学の2枚翼風車を解析対象とし,精度を検証した.風車特性は周速比λ,出力係数Cp,スラスト係数Caを用いて比較し,他の流体機械の性能と比較できるように効率η=Cp/Caを評価した.実験と風車特性の計算結果は周速比λ=6.8以上で良く一致した.最大効率は50%前後であった. 次に,三重大学の3枚翼風車を解析対象に検証した.計算領域は風車羽根車まわりの全球1/3,全球半径は羽根車半径の20倍で,翼まわりに必要な格子を多く配置し総格子数425,880点と少なくした.Cpの実験と計算結果(乱流モデル有)を比較したところ,λ=4.2以上(失速域外)のCp変化は良好な一致であったが,λ=4.2以下(失速域)では,計算結果は実験に見られる急激な出力低下を示さなかった.失速が助長される乱流モデル無(層流)の計算を試みたところ,失速域付近λ=4.5~5.5では実験よりも小さな値を示した.Caの結果(乱流モデル有)では,周速比全域にわたり実験と良く一致した.Cpと同様に,乱流モデル有無の結果を比較し剥離現象の影響を調べた.乱流モデル無の計算は実現象より剥離しやすく,揚力低下,抗力上昇によってCaは実験値よりも小さくなると推定されるが,逆に計算結果は大きく,実験値と乱流モデルとの間を示した.乱流モデル有無による翼面上の流れを描画したところ,乱流モデル無では正圧,負圧面ともに大きな剥離域が生じ,性能低下の要因が確認できた.
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