研究課題/領域番号 |
24561061
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研究機関 | 独立行政法人水産大学校 |
研究代表者 |
石田 武志 独立行政法人水産大学校, その他部局等, 教授 (50438818)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | スマートグリッド / 自律分散システム / チューリングパターン / 太陽光発電 / 燃料電池 / コージェネレーションシステム / 蓄電池 / セルオートマトンモデル |
研究実績の概要 |
太陽光発電(PV)などの自然エネルギーが大規模に導入されると、電力系統が不安定になるという問題が発生する。本研究はこれら諸問題を解決するため、地域内住宅群に分散エネルギー(燃料電池やヒートポンプ、蓄電池など)を適切に配置することで、電力系統への影響が低減できることを示すものである。特に需要家(住宅)のエネルギー設備が不規則に更新されていく中で、需要家にいくつかの設備導入・運用ルールを設定し、分散エネルギー間の相互連携を誘発させることにより、分散エネルギーを構成要素とするクラスター群が自己組織的に形成され、電力系統の恒常的安定性とロバスト性(牽牛性)が保たれることを、マルチエージェントシステムで示すことを目的としたものである。 平成25年度までに、街区内で適切な設備の組合せを創発させる「設備導入ルール」と、隣接設備間での「エネルギー融通ルール」の構築を行った。これにより、中央集権的な制御無しに、個別のエージェントが各自のルールに従って行動することで、分散エネルギー源によるクラスターが形成され、地域のPV余剰電力の大部分を吸収することが可能であることを示すことができた。設備導入ルールの設定には、生物の群れ形成や生体模様形成の基礎モデルであるチューリングモデルの概念(活性因子と抑制因子の相互作用によるパターン形成)を応用している。 平成26年度においては、この基礎モデルをベースに経済性の評価を行うことができる経済モデルの検討を行った。さらに、このようなクラスターが形成される根本の原理についての考察を行い、離散粒子によるセルオートマトンモデルを構築し、隣接との単純な相互作用のみで、境界領域が形成され、複製現象などの細胞分裂を暗示する現象を再現することができた。この成果を利用することにより、エネルギークラスターの形成原理をより詳細に検討することが可能となると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に述べた成果について、国際会議1件(ORIGN2015)、査読論文1本の掲載をすることができた(Takeshi Ishida, Simulations of living cell origins using a cellular automata model, Origins of Life and Evolution of Biospheres, 2014 Apr;44(2):125-41.)。この論文で発表したモデルの構築に時間と労力を集中したため、国内学会での口頭発表はなかったが、これらの成果がベースとなり、新しいモデルの構築が進んでおり、おおむね順調に推移している。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度においては、分散エネルギークラスターが経済的に成立する可能性を明らかにするために、経済性を含めたモデルの構築を行う。近年のIoT(Internet of Things)技術の流れの中で、「インダストリー4.0」などの新しい潮流が生まれており、インターネットに接続された再生可能エネルギー源のネットワークにも新たな可能性が出てきていると考えられる。特にビットコインなどの仮想通貨を支えるブロックチェーン技術は、機械同士の自動取引が可能となり、これらを応用することで、分散エネルギーのクラスター内において、余剰電力の取引などを自動化し、人間の手を介さない自動化された組織体をつくることが可能となる。平成27年度においては、これらの自己組織化され、自律的に経済活動を行う組織体が、経済的に実現できる可能性をモデルシミュレーションで示す予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度において、所属機関の学内行事などのため、海外における国際会議出席の機会が得られず、旅費に該当する部分を中心に次年度使用が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度においては、本研究テーマの成果をまとめて発表していくことに注力していく予定であり、2本の論文発表、国際学会1回、国内学会1回の発表を計画している。このための費用として、英文論文の校正費(20万円)、論文掲載費(60万円、オープンアクセス費用)、国際会議への出席・旅費(20万円)、国内学会への出席・旅費(10万円)などを支出する予定である。
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