太陽光発電(PV)などの自然エネルギーが大規模に導入されると、電力系統が不安定になるという問題が発生する。本研究はこれら諸問題を解決するため、地域内住宅群に分散エネルギー(燃料電池やヒートポンプ、蓄電池など)を適切に配置することで、電力系統への影響が低減できることを示すものである。特に需要家(住宅)のエネルギー設備が不規則に更新されていく中で、需要家にいくつかの設備導入・運用ルールを設定し、分散エネルギー間の相互連携を誘発させることにより、分散エネルギーを構成要素とするクラスター群が自己組織的に形成され、電力系統の恒常的安定性とロバスト性(牽牛性)が保たれることを、マルチエージェントシステムで示すことを目的としたものである。 平成25年度までに、街区内で適切な設備の組合せを創発させる「設備導入ルール」と、隣接設備間での「エネルギー融通ルール」の構築を行った。これにより、中央集権的な制御無しに、個別のエージェントが各自のルールに従って行動することで、分散エネルギー源によるクラスターが形成され、地域のPV余剰電力の大部分を吸収することが可能であることを示すことができた。 平成26年度においては、クラスターが形成される根本の原理についての考察を行い、離散粒子によるセルオートマトンモデルを構築し、隣接との単純な相互作用のみで、境界領域が形成され、複製現象などの細胞分裂を暗示する現象を再現することができた。 平成27年度においては、この基礎モデルをベースに分散エネルギーのクラスターの具体像の検討を行った。近年のIoT技術や、ビットコイン等を支えるブロックチェーン技術は人間を介さずに取引を自動化することを可能とするポテンシャルを持っている。これらの技術を用い、分散エネルギークラスターが「群れ」を成すことで、仮想的な無人企業体を形成する可能性を検討した。
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