研究課題/領域番号 |
24561063
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
波岡 知昭 中部大学, 工学部, 准教授 (90376955)
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キーワード | 機能性材料 / タール / バイオマスガス化 / 燃料電池 / 燃料極 / 炭素析出 |
研究概要 |
当初の計画では、初年度に含浸法、または共沈法により多元合金電極触媒燃料極を作成することを想定していたが、発電時に電極触媒のシンタリングによる粒成長があり、期待していた電極を製造することができなかった。そこで、今年度(2年目)は、初めに多元合金粒子を製造した上で、既存の電極作成法と同様の方法により電極を作成し、その性能評価を行うこととした。 多元合金電極としてニッケル銅合金を選んだ。合金粒子の製造はグリシン硝酸塩燃焼法により作成した。グリシン硝酸塩燃焼法によるニッケル銅合金製造の最適条件を選定したところ、操作条件の一つであるグリシン・硝酸塩比はニッケルと銅の比率により異なり、それらはニッケル銅合金粒子の収率に影響を及ぼした。具体的には、Ni:Cu=4:1の時にはグリシン・硝酸塩比が1付近、Ni:Cu=1:4の時には2以上が適当であることがわかった。最適条件で作成したニッケル銅合金を水素雰囲気化で還元処理した後にXRDにより構造解析を行い、ICDDカードと比較を行ったところ、所定のニッケル・銅比率の合金が形成できていることが確認できた。 これらの粒子を用いて、ニッケル銅合金粒子の炭化水素への暴露実験を行い、耐炭素析出性能の評価を行ったところ、900℃、水蒸気比1の条件で、Ni, Ni0.8Cu0.2, Ni0.5Cu0.5の合金粒子では繊維上の炭素析出物が観察されたが、Ni0.2Cu0.8及びCuの粒子では炭素析出物は観察されなかった。つまり、銅の含有量が増加することにより炭素析出を抑制することができた。本研究では模擬タールとしてトルエンを用いたが、本実験のように炭素源としてトルエンを用いた場合と、既往研究にあったような炭素源として一酸化炭素を用いている場合ではニッケル銅粒子の耐炭素析出性能に違いが見られることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、発電実験までは辿り着いたものの、シンタリング及び粒成長の問題があり、方針変更をする必要があった。今年度(2年目)は当初の研究計画から変更があったものの、ニッケル銅粒子の合成・評価、耐炭素析出性能の評価、さらには発電実験の評価の一部まで到達し、当初の目標に対して、若干ではあるが期待を上回る達成度となった。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までは、機能性合金としてニッケル銅合金に的を絞り評価を行って来た。ニッケル銅合金は理論面だけでなく、実験的にも炭素析出耐性があることが確認できた。しかし、熱に対する耐久性が低く、電極製造時や発電時の温度が融点より低い温度であったとしても銅成分の消失が生じることがわかった。そこで今年度は近年水蒸気改質触媒として注目を集めている、Ni-Mn、Ni-Mo、Ni-CeO2、Ni-MgO等の合金を用いてその合金比や運転温度が炭素析出特性や熱安定性、発電性能に及ぼす影響を評価することにする。合金化による水蒸気改質触媒性能向上のメカニズムとしては、シンタリングの防止によるものと考えられている。しかし、助触媒効果による可能性も考えられる。また、例えば酸化セリウムとの合金では、酸化セリウムの酸素ストレージ能が電極表面での酸素供給源として働くことにより炭素析出を抑制可能となる可能性が考えられる。そこで、上記の合金触媒の炭素析出耐性を定量的に評価した上で、そのうちの幾つかについては発電実験を行う。燃料電池の電極触媒には導電経路の役割もあり、合金比は発電性能に対しても影響を及ぼす。上記の点を勘案して、最終的にバイオマスガス化ガスを燃料とする燃料電池の電極触媒として最適な電極材料を提案する。 今年度5月から9月までは各種合金粒子の製造と炭素耐性の評価を行い、10月以降は発電実験及び実燃料電池運転条件での炭素耐性の評価を行う。
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