昨年度に行ったNi-Cu合金電極触媒は炭素析出耐性には優れた性能を示したが、高温還元雰囲気下にて銅の一部が揮発・消失するため、電極作成・焼成時や発電実験中にも徐々に銅が消失することがわかった。そのため、今年度は銅以外の機能性材料との合金化・複合化による耐炭素析出性能の評価及び発電性能の評価を行った。ニッケルをセリアと複合化した電極触媒を900℃、水蒸気比1.2の条件で4100ppmのトルエン+水素バランス雰囲気下で炭素析出耐性を評価したところ、セリアをわずかでも添加した試料には炭素析出がみられないことがわかった。これはセリアが水蒸気により酸化され、一方、水素や炭素により還元されるRedox反応が生じることによる影響だと考えられる。ニッケルセリア複合電極触媒を用いた燃料電池の発電性能を評価したところ、セリア/ニッケル比の上昇に伴い過電圧が低下した。ただし、セリア添加量10 mol%を極大値として、それ以上添加すると逆に過電圧が増加した。NiOのみとNiO-CeO2コンポジットのTPRを比較すると、NiO-CeO2の還元温度は低温側にシフトしており、CeO2はNiOとの間に相互作用を引き起こしていることがわかった。このことから、CeO2はニッケルへの水素吸着や水素の解離を助ける効果があり、そのことが性能向上に影響を及ぼしたものと考えられる。一方、添加量の増加とともに過電圧が増加したのはセリアのSMSI=Strong metal support interactionにより、セリアがNi粒子を覆い、有効な活性点数が減少したためではないかと考えられる。以上のことから、バイオマスガス化ガス駆動燃料電池の電極触媒材料として最も可能性が高いものとしてNi-CeO2コンポジットだと考えられ、その中でもNi/CeO2=1/9のものが最適であることがわかった。
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