本課題の目的は、我々が2010年に報告した「植物細胞における遺伝子ターゲッティング法」に関した非相同末端結合能欠損株を用いた高効率技術について、その実用性を明らかにすることであった。 ターゲッティングにより、「遺伝子破壊」ではなく「発現する蛋白質へのタグ付け」を行い、本技術の遺伝子機能解析への有用性を示すことにした。KU70遺伝子にGFPのタグが付くとともにビアラフォス (Bar) 耐性で選択できる様にするための遺伝子導入用コンストラクトを作製した。電気穿孔法によりlig4欠損株のカルスにそのDNA断片の導入を行っているが、耐性を獲得したカルス細胞は得られていない。導入断片は、相同配列で挟まれた間にBar耐性遺伝子も含む3 kbp程の本来の配列に無い配列を持たせており、これが組換えの効率を下げてしまうのかもしれない。「RNAiによりKU70量を抑制した野生型細胞を用いたターゲッティング実験」に関しては、野生型株から得られたカルス細胞にKU70遺伝子の最上流コード領域に対するRNAi用mRNA発現させることを進めた。導入株はハイグロマイシン(Hyg) 耐性を獲得することで判別できるようにした。遺伝子導入実験を続けたが、現在のところ耐性を獲得したカルス細胞は得られていない。この導入断片は、Hyg耐性遺伝子とRNAi用のmRNAが一本のmRNAとして転写されるようにした。Hyg耐性遺伝子の発現には影響しないと考えていたが、再検討したい。 「T-DNAによる高効率な細胞内への遺伝子導入法との共用」については、実験を行うことはできなかった。一方、「カルスからの植物体への再生」については、カルス培養の培地の植物ホルモン組成を変えることで、シュート形成を誘導できることを確認した。申請した研究期間は修了するが、本課題について充分な成果が得られるまで引き続き実験を継続する。
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