研究概要 |
平成24年度は、地理的にも環境的にも異なる場所から単離された S. cerevisiae 36 株を用い、細胞形態情報の定量化と解析を行った。これらの36株は共同研究者の Schacherer (CNRS, France) らにより精密な遺伝子多型マッピングが行われており、実験室酵母株を対照として約 65,000 箇所の SNPs, 約 200 個の欠失が報告されている (Schacherer ら (2009)) ため、 表現型の違いが遺伝子多型に起因するかどうかを関連解析により検討することができる。これらの 36 株および対照として実験室酵母株を加えた 37 株について細胞を培養・固定・染色し、顕微鏡観察により細胞外形・核 DNA・アクチン細胞骨格の形態情報を取得し、酵母細胞形態定量化プログラム CalMorph で細胞形態を501の形態パラメータで数値化した。37 株の細胞形態の違いを統計的に評価するために、各株 5 回ずつの独立実験データを取得した。 形態情報の解析として、まず細胞形態の類似性に基づく野生酵母のグルーピングを行った。研究代表者らが開発した手法を用いて、パターン変化の類似したグループをクラスター解析により検出し、グルーピングの妥当性を統計的に評価したところ、36株の野生酵母には形態の類似したグループが複数存在することが分かった。この細胞形態の類似性に基づくグルーピングが、他の観点からのグルーピング、例えば SNPs から推測される遺伝的系統や単離された生育環境、発酵特性や病原性といった有用形質と関連しているかを調べたところ、遺伝的系統を反映しているグループと反映していないグループがあり、今後関連解析を行う上で遺伝的系統を反映していない形態の取り扱いに留意する必要があることが分かった。
|