26年度に次の解析を行った。1)ヒメツリガネゴケの原糸体組織を用いたトランジェントアッセイ系の開発:これは25年度から継続して行ったもので、コケの遺伝子発現リズムを短期間で簡便に測定する事を目的として、時計遺伝子プロモーターとルシフェラーゼレポーター遺伝子を連結したDNAを、パーティクルガンを用いて一過的に組織に導入し、発光変動の追跡を試みるものである。PpCCA1b、PpPRR4などの遺伝子のプロモーターを用いたレポーターコンストラクトを導入した場合に、明暗サイクル条件下と連続暗条件下において約24時間周期の発光リズムを観察できた。これらのリズムの生理特性を様々な面から調べ、エフェクターDNAの共導入などによる機能解析のプラットフォームとしての実験条件を整えた。試験的にPpCCA1bレポーターとPpCCA1bエフェクター(過剰発現)の組み合わせで共導入を行い、予備的ではあるが発光パターンに変化が認められた。2)レポーターをコケのゲノムDNAに組込んだ「安定な」レポーター株は、従来Lhcb2、CCA1a、CCA1bについて作出し解析に利用してきたが、これに加えてPpPRR4を始めいくつかの安定なレポーター株を作出した。PpPRR4レポーター株については、mRNAのリズムを反映した、PpCCA1bレポーター株と逆相の発光リズムが観察できた。これらレポーター株を標準ホスト株として、時計関係遺伝子の破壊株の作出に着手した(まだ候補株は得られていない)。3)24-26年度に行った研究成果の総括:平成26年度は本研究計画の最終年度であるので、3年間で得られた成果をもとに、ヒメツリガネゴケの時計機構に関する分子モデルと緑色植物における時計機構の進化に関する仮説を考案した。この結果は、27年度以内に総説として発表する予定である。
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