前年度までに大腸菌リボソーム解放因子ArfAによるNTC(non-productive translational complex)解消にRF2が必要とされることを明らかにし,さらに,ArfAと相互作用するリボソームタンパク質の探索,ArfAとリボソームとの相互作用に重要な残基の特定を目指した解析を行った。本年度,ArfAに対するアミノ酸残基置換導入がArfAのリボソーム結合能,及びリボソーム解放能に与える影響をより詳細に解析したところ,ArfAに特徴的な塩基性アミノ酸残基クラスターの正荷電がリボソームとの結合に重要であることを示す結果を得た。また,リボソームのA及びPサイト近傍に存在するリボソームタンパク質S9とArfAとの相互作用も観察された。さらに,Fe-BABEを用いたラジカルプロービング法により,結合状態におけるArfAとリボソームの相対的位置関係の解析を行ったところ,人工的に再現したNTC中のリボソーム上,mRNA結合部位に相当する領域にArfAが存在すること,また,その結合状態がRF2の有無により変化することが明らかとなった。ArfAとRF2とは直接相互作用せず,リボソームを介してのみ挙動を一にした。これらの結果は,これまでに提唱していたモデル,すなわちArfAがNTC中のリボソームの空のAサイトを認識・結合し,おそらくはリボソームのコンフォメーションを変化させることでRF2をリクルートするという機構に合致するものである。
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