研究課題/領域番号 |
24570009
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
寺本 孝行 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 特任助教 (90571836)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | カルシウムイメージング / 線虫 / 神経 |
研究概要 |
1)頭部ニューロンの同期自発活動の測定とニューロンの同定 線虫頭部において、多数のニューロンの活動を4-D Ca2+イメージングし、自発的に活動するニューロン同定を進めた結果、同一のトランスジェニック線虫株であっても個体によって、Ca2+センサーの発現パターンにばらつきがあること、また、従来の解析システムでは近接したニューロンの細胞体を分離して計測することが困難であることが判明した。これら問題点を解決するために、pkc-1プロモーターに核移行シグナル(NLS)を接続したCa2+センサーNLSYC2.60を作成し、ニューロンの核にNLSYC2.60を発現させて4-D Ca2+イメージングすることで、少なくとも10個以上のニューロンの活動を分離して計測可能な手法を開発した。さらに、UV法を用いて、導入遺伝子を線虫の染色体に挿入させることで、個体ごとの発現パターンの違いを低減させた線虫株を作成した。 2) ギャップジャンクション(GJ)変異体における頭部ニューロンの4-D Ca2+イメージング 多くの頭部ニューロンで発現が報告されているギャップジャンクションINX-7の変異体(inx-7)に、YC3.60を導入したトランスジェニック株を作成し、頭部ニューロンの4-D Ca2+イメージングを行った。しかしながら、これまでのところ野生株の頭部ニューロンの自発的な活動と大きな違いは見いだされていない。よって、INX-7によって構成されるGJが、同時自発活動に関与する程度は大きくないことが示唆されるが、(1)で述べた技術的問題のためとも考えられるので、新たにinx-7変異体、また、化学シナプスの関与を調べるために、unc-13変異体にNLSYC2.6を導入した線虫株を作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度における研究の結果、多数のニューロンの4-D Ca2+イメージングにおいて、近接したニューロンに関して、それらを分離して計測することが従来の方法では困難であることが判明したが、新たにNLSYC2.6を用いるイメージング手法を開発したことで解決のめどがついている。また、これまで4-D Ca2+イメージングでニューロンの同定に用いてきた赤色蛍光タンパク質mCherryに加え、それとは異なる波長を持つ複数の赤色及び近赤外系蛍光タンパク質(TagRFP, mApple, E2crimson, TurboFP650)の線虫用発現ベクターを作成し、特定のニューロンで発現させることに成功しており、ニューロンの同定に複数の赤色波長のマーカーが使用可能となっている。今後、これら赤色系蛍光タンパク質をNLSYC2.6を線虫染色体に挿入した線虫株に発現させることで、一度により多くのニューロンの同定を行うことが可能になる。以上の理由より、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、自発活動を行うニューロンの同定を進めつつ、感覚ニューロンからの入力刺激の影響を調べる。本年度の研究によって、pkc-1プロモーターに接続したNLSYC2.6を発現させた線虫株(pkc1p-NLSYC2.6株)では、感覚ニューロン(AWA, AWC, ASH, ASEなど)では、NLSYC2.6がほとんど発現しないことが明らかになっている。そこで、各感覚ニューロン特異的プロモーターを用いて、核にはNLSYC2.6、また細胞質には赤色蛍光タンパク質を発現するコンストラクトを、pkc1p-NLSYC2.6線虫株に導入し、新しい線虫株を作成する。この線虫株を用いて、感覚神経における入力刺激応答と、他の複数ニューロンの活動を同時に4-D Ca2+イメージングする実験系を確立し、入力刺激の自発活動に対する影響の解析を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、共用設備として4-D イメージングシステムの3波長目の画像取得に必要な高感度高精細カメラを購入したことから、老朽化のために購入を予定していた遠心器と、実体顕微鏡の購入を先送りした。このため、次年度は、これら物品に加え、イメージングシステムに用いる光学フィルターや、プラスチックシャーレ、ピペットチップなどの消耗品の購入に使用する予定である。
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