研究課題/領域番号 |
24570009
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
寺本 孝行 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 特任助教 (90571836)
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キーワード | カルシウムイメージング / 神経 / 線虫 |
研究概要 |
1)4-Dイメージングシステムの高速化: これまで4-Dイメージングシステムの画像取得における最高速度は50fpsであった。この速度は線虫ニューロンの活動を計測するには十分であるが、生きた線虫の多数ニューロンをトラックするには、困難な場合が多いことが判明した。そこで、カメラとレーザーの信号制御系の輻輳や対物レンズピエゾの共振などの高速化における技術的問題を解決することで、95fpsまでの画像取得速度を実現した。 2)新型カメラによるmCherryを使った細胞トラッキング: より精度の高い細胞座標位置をトラッキングするため、ランドマークとしてNLSx4を融合したmCherryをニューロンに発現させ、それを本研究予算を一部として購入した高感度高精細カメラでとらえ、得られた各ニューロンの座標位置情報をもとに各ニューロンのレシオ(YFP輝度/CFP輝度)変化を解析する実験系を確立した。 3)ニューロンの間での相関解析: 上記の方法で計測したニューロンの活動の相関を解析することで、自発的な活動を行う複数ニューロンの中で、正や負の相関を示すニューロンを複数検出することに成功した。また、解析に成功した細胞について各細胞間の相関係数に色を割り当てて、マトリクス表示することで、神経活動の全体像をサンプル間で比較することが可能になった。 4)頭部神経活動に対する感覚ニューロンからの刺激: 4-Dイメージングで頭部ニューロン群の活動を計測しながら、感覚ニューロンに匂い刺激を与える実験を行ったところ、感覚ニューロンだけでなく、未同定の複数ニューロンが刺激に対して応答することを見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに4-Dイメージングシステムの高速化を実現したことで、動きのある複数ニューロンをトラックすることが可能となり、これまで以上に多くのニューロンを同時にトラックすることに成功している。また、昨年度からの課題としていた、4-Dイメージングを行いながら感覚ニューロンに刺激を加える実験を行った結果、複数ニューロンが刺激に対して応答することが示されたことなどについて進展があった。一方、昨年度までmCherryを細胞同定のためのマーカーとして使用していたが、細胞トラッキングのための位置情報として使用することになったので、さらに別の波長領域の蛍光タンパク質を使用することが必要になった。この点に関してはCFP,YFP,mCherryと異なる波長域を持つTagBFPとTagRFP675 を利用することで解決が可能であると考えている。なおTagBFPとTagRFP675については、すでに線虫頭部ニューロンで発現する発現ベクターの構築が完了している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでより安定して多くのニューロンのレシオ変化を捉えられる実験系が整いつつあるので、4-Dイメージングのデータ数を増やすことで、個体ごとの神経活動パターンのデータを蓄積し、神経活動パターンの分類を目指す。また、Ca2+イメージングに使用する蛍光タンパク質とは異なる波長特性を持つ蛍光タンパク質を用いて、細胞同定が可能なシステムを構築する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験上必要となった4-Dイメージング顕微鏡に使用する対物レンズと、老朽化していたサーマルサイクラーの購入を優先し、購入を予定していた遠心器などの機器の購入を先送りにしたため。 4-Dイメージングシステムで取り扱う波長域の増加に対応するための対物レンズや蛍光フィルターなどの光学素子に加え、プラスチックシャーレやピペットチップなどの消耗品を購入する予定である。
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