研究課題/領域番号 |
24570014
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
齋藤 裕 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 特任教授 (20142698)
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研究分担者 |
伊藤 桂 高知大学, 教育研究部総合科学系, 准教授 (40582474)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | Tetranychidae / Stigmaeopsis / Schizotetranychus / 生活型 / 隠蔽種 / 属分類 / 分子系統 / 生活史 |
研究概要 |
ハダニ類のうち、特に系統仮説に混乱のあるSchizotetranychus属とStigmaeopsis属の種を中心に、国内での採集調査を実施した。また、採集した種を飼育し、同種個体群間、近縁種間での生殖的隔離の有無についての実験、また生活型の記載を行った。本年度における成果のうち、特筆すべきは、これまで同一種として疑われなかったケナガスゴモリハダニ(Stigmaeopsis longus)のチシマザサ寄生個体群とクマイザサ寄生個体群の間にかなりの程度の生殖的隔離が発見されたことである。両個体群には社会性を含む生活型に全く差がみとめられないが、寄主植物を異にしていること、またチシマザサとクマイザサはしばしば同所的に分布することから、寄主植物の転換を通じた同所的種分化の例になる可能性が高い。同時にこれは、いわゆる隠蔽種の発見でもある。現在そのDNA変異の分析を行っている。その結果、および今後の形態の分析からをもとにチシマザサ個体群を新種として記載することになろう。また、Stigmaeopsis属のススキスゴモリハダニにおいても、同様の発見があった。従来から知られていたオスの攻撃性レベルを異にする2つの型(Form)を精査したところ、両者には有意な生活史の違いがあったことである(Saito et al.2012).一般に生活史は近縁種間では変異しにくい特性であり、この発見は両者を別種とするに十分な違いだと判断された。しかし、この2型のあいだにはまだ形態的な違いが見いだせておらず、次年度にその問題を持ち越すことになった。これら以外にも、採集調査の結果、現在我が国で未記載の種、また新種と判断されるハダニが発見されている。いずれもまだ分析途上であるが、これらの生活型の中には、既記載種の生活型との関係で重要な変異をもつものが含まれており、今後の研究発展に大いに期するところがある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は初年度ということで、主に採集調査に時間をさいた。そのために、実験的研究、また形態の分析についてはやや遅れ気味で、現在進行形という段階である。それでもいくつかの実験的研究については、年度内に論文としてその成果を公表できたので、計画の進行はおおむね予定通りであると判断している
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今後の研究の推進方策 |
ハダニ科の属のうち分子系統、形態および生活型からみてまとまりがない(1属とは言い難い)のがSchizotetranychus属であると考えられる。そこで、従来この属にまとめられていたが、研究代表者らによって新たな属Stigmaeopsisとして再整理されたグループとSchizotetranychus属との関係を探っていくことが重要だと考えている。また、Oligonychus属とTetranychus属との関係も他の研究者によってごく最近従来と異なる見解がだされている。したがって、今後はその問題も念頭において研究を進める方針である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度繰り越しが生じたのは、1.5月ばかり脊髄疾患のため入院手術を余儀なくされたために、研究、特に調査旅行ができなかったことによる。平成25年度は、この繰り越し分を関西地方での材料収集調査旅費として計上する。
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