研究実績の概要 |
スゴモリハダニ(Stigmaeopsis)属を中心に、これまで知られている7種に加え、3変異種を発見し、その形態、行動、および生活形を分析した(Saito et al. 2013; Chae et al. 2015)。その結果、これら3種はいずれも新種相当のものと判明し、現在記載論文を作成中である。 前年度明らかになったスゴモリハダニ属のススキスゴモリハダニに2型間の生活史の差異をもとに、生活型および形態を検討した結果、巣のサイズに差があること、また形態にも区別可能な違いが発見され、一方を新種として記載中である。 さらに、タケ寄生性の新種が発見され、その生活型や形態から、それがスゴモリハダニとマタハダニをつなぐ形質をもつと推定された。これは、本研究の属の再編に関わる重大な発見になる可能性をもっている。 採集されたハダニ類のDNA解析を進めた結果、いくつかの部位のうちでmtDNA,ITS2が適当であるという結果を得、それをもとに前記の種を含むスゴモリハダニ属とマタハダニ属(Schizotetranychus)の一種の系統関係を推定した。 最終年度ということで、本研究の中心になっているスゴモリハダニ属の10種(先に述べた3変異種を含む)の生活型、行動、分布、寄主植物等の生物学的特性を比較検討し、総括するために、欠落のあったデータをすべて採取した。それに基づいて、種間比較をおこない、造巣性で社会性という共通の特性をもつものの、その細部において大きな変異があること、1寄主植物に大型巣と小型巣をつくる2種が同所的に分布する事例が4例みられることが判明した。これは、この組み合わせが最適な天敵対抗戦略として収斂したということを示唆している。この収斂が、同所的種分化によるのか、異所(時)的分化後の生態的な収斂かは、現在実施中の信頼度の高い分子系統分析の結果を待つことになる。
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