高山生態系における急速な植生変化の現状把握とメカニズム解明に関する研究を北海道大雪山系で行った。高山生態系で最も大きなバイオマスを有するハイマツ帯は拡大傾向にあり、チシマザサの分布面積は過去35年間にほぼ倍増し、高山植物群落へのササの侵入が加速している現状が明らかにされた。雪解けの早期化と土壌乾燥化は湿生植物の乾燥ストレスを増大し、個体群衰退を引き起こすことが個体群モニタリングと動態予測モデルにより明らかとなった。温暖化と雪解けの早期化は高山植物群落の開花時期を加速し、主要花粉媒介昆虫であるマルハナバチの季節活性との同調性を撹乱する、フェノロジカルミスマッチが起き易いことが示された。
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