研究課題/領域番号 |
24570018
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
鈴木 孝男 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (10124588)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 底生動物群集 / 種多様性 / 回復過程 / 津波撹乱 |
研究概要 |
3.11東日本大震災に伴う大津波によって、南三陸から仙台湾の沿岸域に立地する干潟は大きく撹乱された。被害を受けた干潟の生態系サービスが元の状態に復活するには干潟環境の回復と底生動物群集の回帰・回復が必須である。しかし、撹乱の程度は地域毎に様々であることから、回復に関わる主導因子の抽出には、ひとつの地域内に存在する複数の干潟において底生動物群集の回復過程をモニタリングする必要がある。 福島県相馬市の松川浦は津波の影響を受けた干潟の中では最大規模を有し、生物多様性が高い干潟であった。松川浦の中には大小の干潟が存在するが、大津波による干潟の撹乱強度を調べたところ、干潟の位置によってその規模は異なり、大撹乱、中撹乱、小撹乱に類型された。そこで、これまでに調査が行われた地点を参考にし、撹乱規模の異なる11地点を設定して、底質と底生動物群集の調査を行うことにより、底生動物群集の多様性の回復や維持にとって必要十分な条件を抽出することを試みた。底生動物の調査は、研究協力者の補助を受け、2012年9月と2013年3月に船を利用して実施した。 松川浦では2004年6月に底生動物の調査を行なっていることから、震災前との比較が可能である。また、別途調査を2012年3月に実施したことから、震災後の動態を把握できる。これまで2012年9月に行なった調査結果の解析が進み、以前の調査結果と比較検討したところ、以下のことが明らかとなった。(1)干潟の各地点で撹乱強度は異なるが、全体的に堆積していた泥が少なくなり、場所によっては砂が堆積して環境改善がなされたところも存在した。(2)いくつかの地点では地盤沈下の影響もあって、干潟が干出しなくなった。(3)底生動物の種数は震災後1年半を経過した2012年9月には震災前のレベルに達し、特に多毛類の回復は早かったが、種構成は異なり優占種の置き換わりも見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
松川浦というひとつの潟湖内でも、位置する場所や底質の違いによって、大津波の被害は異なっていることが判明した。このため、過去に調査が行われていた調査地点について継続的な調査を開始することによって、撹乱強度の異なる干潟において、底生動物群集の回復過程をモニタリングしていくことが可能であり、実際に2012年9月(震災後1年半経過)と2013年3月(震災後2年経過)に調査を実施した。これまで、2012年9月に得られたサンプルまでは解析が終了しており、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2013年3月に調査したサンプルの解析を進めるとともに、震災後2年半と3年を経過した時点で底質や底生動物群集の調査を同一地点で継続して行なう。これにより、底生動物群集が回復傾向にはあるが群集組成が変化しており、優占種の置き換わりが見られるという現状が、どのように推移していくのかを明らかにする。また、震災後に干潟が干出しなくなったところや、新たに干潟が形成されたところが見られることから、春の大潮の時期に船を利用して、現在の干潟の出現状況をマッピングするための調査を行う。さらに数カ所の重点的調査地点を設定し、底生動物群集の季節的な動態を把握するための調査を実施する。これらを総合して大津波で撹乱を受けた干潟の底生動物群集の多様性の回復や維持に必要十分な条件を抽出することを試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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