蝶類の精子には、核をもち卵と受精できる有核精子と、核がなく受精できない無核精子が存在する。一方、雌の生殖器官は、交尾嚢と受精嚢があり、交尾に際して、精子の含まれる精包は交尾嚢へ注入される。交尾後、有核精子は精包を出て交尾嚢から受精嚢へと移動し、産卵時の受精を待つことになる。無核精子も同様の移動を行ない、有核精子よりもやや早く受精嚢に到達すると共に、有核精子よりも多量に受精嚢に移動することがわかった。しかし、単婚制のアゲハ類の場合、交尾後の時間経過と共に、受精嚢内の無核精子は失活し、無核精子の役割が精子間競争のみにあるのではなく、婚姻贈呈や有核精子の移動補助にもあることが明らかにされた。
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