研究課題/領域番号 |
24570020
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
茂木 正人 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 准教授 (50330684)
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研究分担者 |
谷村 篤 国立極地研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (10125213)
高橋 邦夫 国立極地研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 助教 (50413919)
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キーワード | ハダカイワシ / ソコイワシ / 胃内容物 / 仔稚魚 / 変態 / 海氷変動 / 南大洋生態系 |
研究概要 |
平成25年度は、24年度に引き続き過去に南極海で採集された中深層性魚類試料について胃内容物の解析を進めた。解析は主としてハダカイワシ科魚類(ナンキョクダルマハダカ)とソコイワシ科魚類(ナンキョクソコイワシ)について行った。 ハダカイワシ仔魚は発育段階が進むにつれて餌生物を貝形類からカイアシ類へとシフトしていくことが明らかとなった。このシフトは形態的な(摂餌・遊泳機能の)発育と関連していた。しかし、従来南極海では生態系の鍵種とされるナンキョクオキアミがハダカイワシに利用されている証拠は見つからなかった。このことは、我々が解明を目指しているインド洋区が他の海域とややことなる生態系(食物網)を持っていることを示唆している。さらにハダカイワシ仔魚の分布域が成魚の分布域と比較して南側に集中することが判明した。これは仔魚初期を海氷縁付近で過ごすことを示唆しており、海氷縁付近に仔魚の生き残りにとって有利な物理的・生物学的環境があることを意味している。地球環境変動による海氷の増減は外洋性魚類であるハダカイワシの生物量にも影響を与える可能性がある。 ソコイワシ科は仔魚期には主に小型カイアシ類を捕食していたが、変態し稚魚になるとその他のカイアシ類や多毛類、デトリタスなどに多様化した。鉛直分布については200-500m付近に分布していた仔魚は変態期をはさんで500-2000mに生息深度を変えた。餌生物の多様化と深度分布の変化は明らかに関連していた。 以上の成果は、2本の卒業論文と2本の修士論文(1本は執筆中)にまとめられた。成果に直接関連する研究発表は7本の国際シンポジウムを含む合計8本行った。次年度はこの成果を学術論文に公表するべくブラッシュアップを進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
南極海で卓越する中深層性魚類は4種あり、この4種の生態の解明を本研究は目指している。現在のところ2種のみの解明に留まっており、やや遅れているがいると言わざるを得ないが、科学的にインパクトのある成果が上がりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
上述のとおり進行状況は「やや遅れている」が、次年度は成果をさらにブラッシュアップし予定通り得られた成果の公表に努めるとともに、もう1種についてのデータを得て、学会等で公表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
試料解析に計上していた経費が予定通り執行されなかった。 やや遅れた試料解析経費は次年度に執行を進める。そのための謝金、消耗品に利用する。さらにデータ解析を目的とした旅費のほか、成果の出版に向けた英文校閲費等に使用する計画である。
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