研究課題/領域番号 |
24570022
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
前川 清人 富山大学, その他の研究科, 准教授 (20345557)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 社会性昆虫 / 発生・分化 / 兵隊カースト / RNA-seq |
研究概要 |
防衛のための高度に特殊化した兵隊の存在は,社会性昆虫のシロアリが持つ大きな特徴である。兵隊分化は,職蟻の幼若ホルモン(JH)量の上昇に応じて起こるが,JH量の変動をもたらす調節因子の実体は未だ不明である。また,職蟻へのJH投与による人為的な分化誘導解析から,兵隊分化時の個体の生理状態が種間で大きく異なる可能性も示されている。そこで本研究は,自然条件下の兵隊分化に伴う生理変化を検出する為,種を問わず兵隊分化がほぼ同じタイミングで起こる創設直後のコロニーに注目する。本年度は,大型で飼育が容易なネバダオオシロアリを使用し,300以上の初期コロニーを作製した。孵化個体は全て個体識別し,どの齢の職蟻から兵隊が分化するかを正確に記録した。その結果,最初に3齢に脱皮した個体が常に兵隊に分化した。更に,最初の3齢個体(予定兵隊)の出現から兵隊への脱皮に至るまでの個体間相互作用を観察したところ,予定兵隊は他の職蟻よりも生殖虫からの栄養交換を顕著に多く受けていた。続いて,分化前に特異的に発現する遺伝子を網羅的に探索することを目的とし,次世代シーケンサーを用いたRNA-seqを行った。その結果,予定兵隊では,巣内で2番目に生じた3齢個体と比較して,キイロショウジョウバエのリポカリンNeural Lazarilloのホモログ(ZnNLaz)が顕著に高い発現を示した。ZnNLazのRNAiを行った結果,コントロールと比較して,兵隊に分化する個体の割合は著しく減少し,多くの個体が4齢に脱皮した。ショウジョウバエでは,NLazがインシュリンシグナル経路を抑制することが知られるため,兵隊分化過程においても本経路の関与が強く示唆される。以上の結果の一部は,原著論文にまとめると同時に,第60回日本生態学会,第57回日本応用動物昆虫学会,平成24年度日本動物学会中部支部会(最優秀学生発表賞受賞)にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では,次世代DNAシーケンサーを用いた網羅的トランスクリプトーム解析は2年目に行う予定だったが,コロニー内で兵隊に分化する個体の特定と行動解析の結果を得ることが想定以上に早く完了したため,1年目から着手できた。本解析の遂行により,極めて重要な候補遺伝子の特定にも成功したため,今後の進展が大いに期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
次世代DNAシーケンサーを用いた網羅的トランスクリプトーム解析により,兵隊分化前に特異的に発現する候補遺伝子を特定することに成功した。今後はまず,この候補遺伝子の作用機序を明らかにすることを目指す。具体的には,発現部位の特定を目指すと共に,RNAiを利用したノックダウンの効果を行動学的・分子生物学的に解析する。また,他の候補遺伝子についても同様に解析を進める。さらに,各遺伝子の働きを,ネバダオオシロアリ以外の対象種においても解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
兵隊分化を規定する候補遺伝子の作用機序を明らかにするために,免疫染色やリアルタイム定量PCRを行う。さらに,ネバダオオシロアリのRNA-seqの繰り返し実験や,他種における次世代DNAシーケンサーを用いた網羅的トランスクリプトーム解析を行うために,高額な試薬キット類などの消耗品が大量に必要となる。また,RNA-seq解析を行うための基礎生物学研究所への出張旅費や,学会(動物学会,昆虫学会または応用動物昆虫学会)への参加旅費も必要となる。
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