研究課題/領域番号 |
24570023
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小澤 理香 京都大学, 生態学研究センター, 研究員 (90597725)
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研究分担者 |
有村 源一郎 東京理科大学, 基礎工学部, 准教授 (60505329)
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キーワード | カンザワハダニ / トランスクリプトーム解析 / RNA-Seq / 寄主植物 / 解毒酵素 |
研究概要 |
植食者の食性幅の決定には、植食者と寄主植物の相互作用の特異性が重要な鍵となるが、その分子機構に関する研究は未だ少ない。本研究では、マメ科植物に異なる防衛反応を誘導する2つの系統のカンザワハダニ(Tetranychus kanzawai)を用いて、これら2系統間の「トランスクリプトーム解析」および「RNAi法を用いた候補遺伝子の発現抑制」により、植食者と寄主植物の相互作用にかかわる遺伝子群の単離・機能解析を試みる。当該年度は、2系統(赤系統、白系統)のハダニのトランスクリプトーム解析に先立ち、遺伝子探索の確実性を上げるため、各系統につき2系統ずつの選抜を行った。これらの系統を用いRNA-seqによりトランスクリプトーム解析を実施したところ、各系統内では発現量の大きな差は認められなかったが、赤系統で白系統よりも発現量の高い遺伝子が多く認められた。トランスクリプトーム解析の結果をもとに、消化酵素や解毒に関わる酵素を中心にハダニと植物の相互作用にかかわる鍵遺伝子について精査しているところである。また、新たに開発された簡便なRNAi法の確認試験を行った。 ハダニは自然生態系で多様な植物との相互作用を示すが、その分子生物学的要因はほとんど研究されていない。本研究ではハダニに焦点を当て、寄主植物との相互作用における分子メカニズムの新たな多様性の発見を目指している。本成果は、他の分野や応用に展開できる有意義なものになると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
系統数を増やすことにより研究の実施にやや遅れが生じたが、より確実に系統間で差のある遺伝子の発掘を可能にした。
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今後の研究の推進方策 |
系統数を増やしたことによる計画の遅れを解消するために、当初予定していた方法とは異なる簡便なRNAi法を試みる。また、当該年度の結果より、解毒関連の遺伝子において、系統間の発現量の差が顕著であるものが認められた。しかし、マメ科以外の寄主植物で、系統間のパフォーマンスに大きな差異を産み出すものは発見されなかった。今後は探索された遺伝子の役割を追究するために、当世代の寄主植物上のパフォーマンスに加え、農薬耐性や次世代以降における異なる寄主植物上のパフォーマンスについても検討を加える予定である。
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