研究課題/領域番号 |
24570027
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
坂井 陽一 広島大学, 生物圏科学研究科, 教授 (70309946)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 魚類 / 成熟パターン / 幼魚 / 社会的性決定 / 性転換 |
研究概要 |
本年度は、幼魚の成熟時の性分化への社会条件の影響を分析するための実験を中心に研究を実施した。 雌性先熟型の性表現をもち、幼魚がメスへと性分化することが通常のパターンである、トラギス科コウライトラギス、キンチャクダイ科アブラヤッコ属2種、スズメダイ科フタスジリュウキュウスズメダイを材料に、幼魚を単独飼育する実験をスタートさせた。いずれも平成25年度内に成熟すると予想され、各個体の成熟時点での性を生殖腺の精査により判別し、社会的性転換をみせるこれらの魚種が、優劣関係のない状況下でどのような性を発現させるのかを分析する予定である。 上記に加えて、成熟時の性決定の柔軟性が性転換魚類のみにとどまらない可能性を検討するため、雌雄異体種のスズメダイ科のルリスズメダイとオヤビッチャを材料に、幼魚の飼育実験をスタートさせた。この実験では、雌雄がほぼ均等割合で性分化すると予想される幼魚へ、社会条件(優劣関係)がどの程度影響を与えうるのかを評価することを目的に、幼魚2個体でのペア同居飼育を現在も継続実施している。各個体の成熟時点での性を生殖腺の精査により判別し、性比および発現した性と個体の優劣関係(体サイズの大小関係)の関係性を分析する予定である。 現在までの成果の1つとして、上記の雌雄異体種のペア飼育実験において、成長の過程で同居個体間に極端なサイズ差が生じ、優劣関係が明確になることを確認した。これは性転換魚類でみられる”成長の社会調節”と同様の現象であり、個体間関係が成長に強く影響を与える生物特性が性転換現象に付随するものとは限らないことを示唆する。ただし、雌雄異体魚においても幼時は雌雄同体性を持ち合わせている可能性もあり、性転換魚類と同じメカニズムが限定的に発現している可能性もある。この視点を今後の研究分析の焦点とする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初より計画していた研究実施計画のうち、水槽飼育実験に力点をおいて実施したが、これは野外操作実験の実施を予定していた口永良部島のフィールドの個体群コンディションが実験実施に適さなかったためである。野外実験に関しては平成25年度に実施できるはずである。そのため、幼魚の成熟までの成長を待つ必要があるため、結果の分析までに時間を要することとなる飼育実験を優先して実施した。幼魚の飼育は順調に進めることができている。また、実験に使用する幼魚を確保する目的で、沖縄県沖縄島中部沿岸、鹿児島県坊津、鹿児島県屋久島、鹿児島県口永良部島のフィールドにおける魚類の生息状況の査察を実施することができ、次年度以降の飼育実験に使用する幼魚の確保を容易にする情報を手に入れることに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究実施計画に沿って研究を遂行する予定である。平成24年度に実施を見送った野外操作実験については、平成25年度以降の実施により予定した分析データを獲得する。また、幼魚の飼育実験についても、飼育に関する環境を平成24年度で確立できており、平成25年度以降、追加の実験セットの実施と、結果の分析を進める予定である。学会報告については、平成25年度は国内学会で実施し、平成26年度には国際学会で実施することを現在のところ予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、野外操作実験の実施に関する旅費、消耗品等に予算を使用する。また、幼魚飼育実験に関する、幼魚採集および飼育に関する活動(旅費および消耗品)に予算を使用する。加えて、国内学会への参加発表を実施する目的で使用する計画である。
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