研究課題/領域番号 |
24570029
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
竹垣 毅 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科, 准教授 (50363479)
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研究分担者 |
征矢野 清 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科, 教授 (80260735)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 行動生態学 / 進化 / 繁殖戦略 / 内分泌 / 魚類 |
研究概要 |
ロウソクギンポ雄の(1)非適応的に見える厳格な繁殖サイクルをもたらす内分泌システムの進化要因を明らかにするために、(1-a)雄の求愛活性を促進する11-KTが、一方で免疫機能を低下させる効果を持つかを検証した。野外で繁殖サイクルの求愛フェイズと保護フェイズの雄を採集し、魚類で免疫機能の指標とされる腎臓内のリゾチウム活性を調べた。その結果、両フェイズともに比較的高いリゾチウム値を示し、有意差はなかった。この結果は、11-KTが免疫機能に影響しないことを示唆する一方で、免疫機能がフェイズが移行する数日単位で変動するようなものではないことも示唆した。 次に、雄の全卵食行動が(2)繁殖サイクルへの対抗戦術であることを検証するために、巣の中の卵の存在が繁殖サイクルをもたらすカギ刺激であることを検証した(2-a)。野外で人工巣を利用する雄に卵を追加・除去する操作実験を行ったところ、卵を除去した雄の11-KTとTレベルは上昇して求愛フェイズに戻り、卵を追加した雄のホルモンレベルは低下して保護フェイズに入るという予測通りの結果が得られた。この結果は、巣内の卵の存在かあるいは卵の存在によって始まる(または終わる)雄自身の卵保護行動がカギ刺激であることを強く示唆した。 さらに、雄の全卵食行動が栄養摂取のためではなく、保護卵を除去するための行動であることを示すために(2-b)、野外で全卵食した雄と部分卵食した雄の体コンディションと実際に食べた卵数の関係を調べた。その結果、部分卵食した雄はコンディションが悪いほど多くの卵を食べていたが、全卵食した雄はコンディションにかかわらず全卵を食べていた。つまり、部分卵食する雄とは異なり、全卵食する雄は栄養摂取を目的とはしていないこと、すなわち産卵可能な求愛フェイズに速やかに移行するために卵を巣から消し去ることで自身のホルモンレベルを高めていると推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
3ヶ年で4項目を実施する計画であったが、初年度で3項目に取り組み、そのうちの2項目で予測通りの結果が得られた。とりわけ、巣内の卵の存在によって、雄の血中アンドロジェンが変動する結果はクリアで仮説が正しいことが示された。また、雄の求愛活性を促進する性ホルモンが免疫機能の低下をもたらす影響は検出されなかったが、これも計画段階から想定しており、残るひとつの研究項目へと繋ぐ成果のひとつとみなすことができる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は繁殖サイクルの適応的意義を解明するための2つ目の研究項目に取り組む。すなわち繁殖サイクルを持つ雄と無い雄を、ホルモンを投与あるいは曝露することで人工的に作り、長期的に追跡して体コンディションや繁殖成功に与える影響を検出する。また、雄による全卵食行動が「食べているのに食べていない」ことを示すために、摂食行動が脳内活性に与える効果を調べる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度の研究費は適正な金額で、若干余剰分が25年度に繰り越されたが概ね請求通りに使用する予定である。
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