研究課題
多くの造礁サンゴは、浮遊幼生が分散・定着する生活史初期に、環境中に分布している複数の遺伝的タイプの共生藻類(褐虫藻)を取り込んで共生を成立させる。本研究の目的は、サンゴ幼生が低緯度から高緯度へと緯度勾配のある海域へ分散した後、親サンゴとは異なる水温・光環境下で生理特性の違う褐虫藻タイプとどのように共生するのかを明らかにして、分散先の環境への適応過程を考察することである。H27年度は前年度までの継続で、稚サンゴ及び環境中から得られたゲノムDNAより、褐虫藻タイプをすべて特定し、これらのデータの解析を行った。その結果、沖縄(低緯度)の稚サンゴ体内からは褐虫藻クレードA~Dの複数の10サブタイプが、高知(高緯度)のものからは同クレードの9サブタイプが検出された。一方、それぞれのサンゴ種の成体がもつ褐虫藻タイプは1タイプのみであった。また、環境中からは、瀬底で8タイプ、高知からは6タイプの褐虫藻が出現した。稚サンゴ内にみられた褐虫藻タイプは2地点間で明瞭に分かれ、特に高知海域では低緯度では出現しないタイプが多くみられた。既存の研究より、このタイプは高緯度海域に普通に分布することが知られており、この海域で定着したサンゴに重要であることを示唆した。
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Mol Ecol
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