本研究の究極目標は、島嶼生態系における食物連鎖の成立機序に対応した捕食者と被食者の適応進化を遺伝子レベルで解明する事である。具体的には、捕食者の色彩パtンの適応進化に係る生態学的情報が十分に得られている伊豆諸島、伊豆半島のシマヘビとオカダトカゲの系をモデルとして、捕食者ー被食者関係の成立機序を分子系統地理学的手法を用いて詳細に再現するとともに、捕食者と被食者の色彩パタンの適応進化させた自然選択の強さとタイミングを推定し、ゲノムレベルと行動・生態学レベルでの解明を目指した。3か年(24-26年度)の研究成果は以下の通りである。 1)シマヘビの系統地理学的解析を2011年に論文公表後、本研究の主要な成果として、2014年にはオカダトカゲの系統地理学的解析結果を論文公表した。2014年には、日本本土におけるシマヘビの重要な餌生物であるモリアオガエルの系統地理学的解析を実施し、その成果を論文公表に向けてとりまとめ中である。 2)2014年度に新島と神津島において、シマヘビの各色彩型を模したモデルを野外に設置し、オカダトカゲの回避行動を評価する野外実験を実施した。その結果、オカダトカゲは、各島のシマヘビ個体群に固有な色彩型を選択的に回避し、見慣れない色彩型を警戒しないことが示された。 3)シマヘビの色素細胞を組織学的に調べ、ストライプ型と非ストライプ型は、黒色素胞の量と配置の仕方によること、不完全優性の遺伝様式であることを解明し、それぞれを論文として公表した。2014年には、ストライプ型と黒化型の胚発生を調べ、黒化型が単純な劣性形質ではなく、黄色素胞、虹色素胞の分化・発現を制限する優性形質である可能性を示唆する証拠を得た。 4)色彩型の分化を規定する候補遺伝子の探索をmRNAの発現解析によって試みた。遺伝子の同定をかなり進めたが、まだ候補遺伝子の絞り込みには至っていない。
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