研究課題/領域番号 |
24570033
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
桑村 哲生 中京大学, 国際教養学部, 教授 (00139974)
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研究分担者 |
坂井 陽一 広島大学, 生物圏科学研究科, 教授 (70309946)
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キーワード | 逆方向性転換 / 双方向性転換 / 配偶システム / 野外除去実験 / 水槽内同居実験 / 独身雄 / サンゴ礁魚類 |
研究概要 |
前年度に引き続き、さまざまな魚類について、逆方向性転換をするかどうかを検証するための野外実験を沖縄県の瀬底島(桑村担当)と鹿児島県の口永良部島(分担者・坂井担当)で、水槽実験を東京海洋大学館山ステー ション (連携研究者・須之部担当) で実施した。 瀬底島においては、一夫多妻・雌性先熟のホンソメワケベラ(ベラ科)で一部の雌を除去する実験により、独身雄どうしの出会いだけでなく、独身雄が隣の小ペアを乗っ取り、その小雄が逆方向性転換することを確認した。一夫多妻・雌性先熟のダンダラトラギス(トラギス科)とミスジリュウキュウスズメダイ(スズメダイ科)についても雌除去・雄独身化実験を実施したが、幼魚の加入が多かったため、逆方向性転換はまだ確認できていない。また、これまで性様式が報告されていないメギス(メギス科)について予備調査を開始した。 口永良部島においては、当初予定していたトラギス科魚種の個体数が激減したため、一夫多妻のフタスジリュウキュウスズメダイ(スズメダイ科)とナメラヤッコ(キンチャクダイ科)を対象とした。前者では野外実験で雌から雄への性転換が初めて確認できたが、雄の強制同居実験ではけんかが激しく、逆方向性転換の確認には至っていない。後者については基本生態を予備調査した。 館山ステーションにおいては、前年度に実施した一夫一妻・ 雄性先熟のカクレクマノミ(スズメダイ科)の水槽実験データを詳しく分析した結果、資源(イソギンチャク)をめぐる雌間競争により一夫一妻となり、逆方向性転換はしないと結論づけることができた。また、ダンダラトラギスの雄強制同居水槽実験を実施したが、相互干渉がほとんどなく、逆方向性転換は起こらなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の野外実験では個体数の減少や幼魚の加入により、予定した実験デザインがうまく維持できず、逆方向性転換の確認種数を増やすことはできなかったが、これまで得られたデータについて「低密度」をキーワードに理論的考察を重ねた結果、以下の結論に近づきつつある。 1.逆方向性転換は、一夫多妻の雌性先熟種が低密度条件で一夫一妻にしかなれない状況において、たまたま配偶者が死亡して独身になった雄が、新たな異性と出会えないときに、近くにいる同性とペアになり繁殖を再開するための戦術として進化した。 2.雄性先熟種(一夫一妻のクマノミ類やランダム配偶のセレベスゴチなど)においては、逆方向性転換は進化しない。 以上のことから、当初の予測(特定タイプの配偶システムをもつ種では逆方向性転換しない)が当たっている可能性が強くなったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き瀬底島(桑村および須之部担当)と口永良部島(坂井担当)において野外実験を実施するとともに、逆方向性転換の進化に関する理論的考察を発展させる。必要が出てくれば水槽実験も実施する(館山ステーション:須之部担当)。 瀬底島においては、一夫多妻・雌性先熟種のダンダラトラギス(トラギス科)とミスジ リュウキュウスズメダイ(スズメダイ科)の野外実験を幼魚加入期前に実施するとともに、新たにアカニジベラ(ベラ科)とメギス(メギス科)についても雌除去・雄独身化実験を実施する。 口永良部島においては、一夫多妻・雌性先熟種のフタスジリュウキュウ スズメダイ(スズメダイ科)とナメラヤッコ(キンチャクダイ科)の野外除去実験を実施する。 これらの実験結果を踏まえつつ、逆方向性転換の有無と配偶システムのタイプとの対応を整理し、国際学会で発表するとともに総説論文を投稿する予定である。
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