研究課題/領域番号 |
24570033
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
桑村 哲生 中京大学, 国際教養学部, 教授 (00139974)
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研究分担者 |
坂井 陽一 広島大学, 生物圏科学研究科, 教授 (70309946)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 逆方向性転換 / 双方向性転換 / 配偶システム / 野外除去実験 / 水槽内同居実験 / 独身雄 / サンゴ礁魚類 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続きさまざまな魚種について、逆方向性転換をするか否かを検証するための野外実験を、沖縄県の瀬底島(桑村担当)と鹿児島県の口永良部島(分担者・坂井担当)で実施するとともに、これまでに得られたデータを整理し、学会発表および論文作成を行った。 瀬底島においては、一夫多妻・雌性先熟種のミスジリュウキュウスズメダイ(スズメダイ科)、ダンダラトラギス(トラギス科)およびアカニジベラ(ベラ科)の雌除去実験を実施し、ミスジリュウキュウスズメダイにおいて雄から雌への逆方向性転換を確認した。これはスズメダイ科としては初めての確認であり、魚類において双方向性転換する種を含む科の数を6科から7科に増やすことができた。またこの実験では、代表者らが提唱している逆方向性転換の進化に関する低密度仮説を支持するデータも得られた。残りの2種については、独身にした雄がすべて消失したり、幼魚や雌の加入が予想以上に多く、結果を出すことができなかった。 口永良部島では、一夫多妻・雌性先熟種のフタスジリュウキュウスズメダイ(スズメダイ科)とナメラヤッコ(キンチャクダイ科)を対象とした。前者では雄除去実験と雌除去実験を実施したが、雌から雄への性転換のみが観察され、逆方向性転換は確認できなかった。ナメラヤッコは前例のない高密度であったため、除去実験を開始せずに、まず自然状態における性転換の観察を優先した。その結果、雌から雄への性転換のみが確認され、低密度仮説の予測通り、高密度では逆方向性転換は起こらなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
瀬底島におけるダンダラトラギスの雌除去・雄独身化実験は繁殖期に入った4月末から実施したが、5月末から幼魚が多数加入して、雄を独身状態に保つことができなかった。そこで、開始時期を早めて再度実験を行うことにした。
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今後の研究の推進方策 |
野外調査としては、上記の瀬底島におけるダンダラトラギスの除去実験開始時期を昨年より1ヶ月早めて、3月末に雌と幼魚を再除去し、繁殖期に入りかつ幼魚加入前の4月末と5月末に独身雄を再捕獲して性転換の有無を確認する予定である。 また、これまで得られたデータについて、以下の2点を軸とした原著論文・総説論文を執筆する予定である。 1.本研究課題の当初の予測通り、逆方向性転換するか否かは配偶システムのタイプによって決まり、雄性先熟種(ランダム配偶のセレベスゴチや一夫一妻のクマノミ類など)においては、逆方向性転換しないことが明らかになってきた。 2.逆方向性転換は、一夫多妻・雌性先熟種が低密度条件で一夫一妻にしかなれない状況において、たまたま配偶者が死亡して独身になった雄が、新たな異性と出会えないときに、近くにいる同性とペアになり繁殖を再開するための戦術として進化したと考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
ダンダラトラギスの逆方向性転換を確かめるための雌除去・雄独身化実験を、沖縄県瀬底島において繁殖期の4月末から実施したが、5月末から幼魚が多数加入して、雄を独身状態に保つことができなかった。そこで、開始時期を早めて再度実験を行う必要があると考え、本実験を優先するため、他種の実験に使用予定であった物品費と謝金の使用を控え、旅費の執行を見合わせることで、次年度の調査旅費を確保した。
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次年度使用額の使用計画 |
沖縄調査旅費2回分(4月末と5月末)とその際の瀬底研究施設使用料に当てる。上記のダンダラトラギスの実験開始時期を昨年より1ヶ月早めて、3月末に雌と幼魚を再除去し、繁殖期に入りかつ幼魚加入前の4月末と5月末に独身雄を再捕獲して性転換の有無を確認するためである。
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